「閣議決定が絵空事に見える」「怖さはある」尖閣抱える石垣、台湾に近い与那国…安保3文書、住民の見方


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日本最西端の碑を視察した浜田靖一防衛相(中央)と自衛隊関係者ら=9月、与那国町

 安保関連3文書で、沖縄の自衛隊は旅団から師団への格上げが明記された。新たな施設や地対艦ミサイル配備計画が進む中、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有も盛り込まれた。防衛力の強化は、かえって住民を危険にさらすのでは―。地域住民らは危機感を抱く。

 尖閣諸島を行政区に抱える石垣市。漁業の男性(55)は「尖閣諸島と石垣島の間の海域は良い漁場。失うのは大きな問題だ。そのための行動は分かる」と話す。その上で「操業中に北朝鮮がミサイル発射した時には、無線で連絡が入るが不気味だ。大国間のぶつかり合いの影響で、自分たちが働く海にミサイルが落とされるということへの怖さはある」と不安感を口にする。

 台湾に近い与那国町漁協の嵩西茂則組合長は、防衛力の増強に賛成するが、自衛隊の港湾利用には「与那国の漁港は現在でも漁船の数が多くいっぱいいっぱいだ。今後どうなるか分からないが、仮に漁船の停泊に影響が出る計画があるならば反対だ」と語る。同町の無職の男性(70)は「すぐそばにすごい軍事力を持つ国がある。外交努力で島を守るべきで、閣議決定は絵空事に見える」と批判した。

 ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会の仲里成繁共同代表は、政府が民間港や空港利用を拡大する理由として輸送力強化とともに国民保護を挙げている点に「詭弁(きべん)だ」と切り捨てた。「国民を危険にさらすなら、まずは丁寧に説明をするべきだ。説明のないまま政府が独断で決めてしまう。国民の人権を侵害している」と批判した。

 ミサイル配備から市民の命を守るうるま市民の会の兼城賢雄さん(77)は「武力を強化して本当に国民を守れるとは思えない」と疑問を呈した。ミサイル部隊の配備には「配備するからかえって敵が攻める姿勢を強める。標的にされて犠牲になるのは住民ではないか」と危機感を募らせていた。

(西銘研志郎、佐野真慈、古川峻)