住民避難への支援は「支障のない範囲」…国民保護への対応は未知数<安保3文書と沖縄>


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日米統合演習のため岸壁に集結した自衛隊車両=11月8日、うるま市の中城湾港

 国家安全保障戦略は、「自衛隊・海上保安庁による国民保護への対応」と明記した。ただ、自衛隊の主たる任務は武力攻撃の排除で、住民避難や救援の支援は「(任務に)支障のない範囲」で行うとする姿勢は変えていない。「武力攻撃より十分に先立って、南西地域を含む住民の迅速な避難を実現すべく」と明記し、有事に向けて強化された機動展開能力を国民保護の任務にも活用すると打ち出したが、どの程度住民避難に関われるかは見通せない。

 南西地域に迅速に展開する能力の強化に向け、自衛隊の輸送船舶や中小型級船舶のほか、輸送機、ヘリの導入を推進する。海上輸送力を補完するため、車両やコンテナ大量輸送に特化した民間船舶(PFI船)を積極活用する方針も示した。

 一方、有事の住民の安全確保を巡っては、石垣市は国民保護計画で、1日4機の航空機を運航しても全市民避難所要期間を「9・67日」と試算するなど、島外避難の困難さが指摘されている。

 自治体による避難誘導は、武力攻撃の予兆がある場合に政府が認定する武力攻撃予測事態でも可能だ。だが、事態認定は相手国に「日本側からの戦争準備」と捉えられ、事態のエスカレートを招きかねない。いったん武力攻撃が始まると、海に囲まれた島々から住民避難を完了させるのは容易ではなく、「軍民混在」の状況が生じる恐れがある。

 与那国町では台湾有事を想定し、政府の事態認定前に避難する町民の生活資金を捻出する基金を設置する意向だ。

 糸数健一町長は「どうしようもない状況になった場合は、各町民に給付金を振り込み、各自でなんとか生き延びてくれと(いう考えだ)」と基金設置の目的を説明している。

(梅田正覚)