水平社宣言の思い、琉球語で差別問う 水平社宣言100年 奈良で翻訳披露する朗読会


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西光寺の清原隆宣住職へ全国水平社創立宣言の琉球語訳と解説書を贈呈する彫刻家の金城実さん(写真奥、右から3人目)=3日、奈良市の西光寺

 「全国水平社創立宣言の琉球語訳を披露する会」が3日、奈良市にある西光寺で開かれた。全国水平社は、被差別部落の人々が人間の尊厳を求め、1922年に創立した。水平社宣言は、部落解放運動の原点と言われ、水平社創立時に発信された。彫刻家の金城実さんが沖縄への差別の問題を問い直そうと今年、琉球語に訳した。

 金城さんが、宣言を起草した西光万吉の生家である西光寺での朗読を希望し、奈良市に住む奈良―沖縄連帯委員会の崎浜盛喜さんに連絡。清原隆宣住職や、琉球遺骨返還請求訴訟弁護団長の丹羽雅雄弁護士などの協力で実現した。

 琉球語訳では、冒頭で水平社の創立を「カミシムヌ ネーラン ウチユ ウマリタル ムヌヤ!」(上も下もない平等を目指す水平社が世の中に生まれた)と記した。差別する側の描写を「シムチ ワッサル アバサー クサブッケージラソーティ ワラティ」(意地悪でハリセンボンのようなふてくされた顔をして笑って)と、金城さんが生まれ育ったうるま市の浜比嘉島の言い回しを使うなど、元の宣言を直訳することにこだわらず、宣言に込められた思いを琉球語で表現した。

 浜比嘉島の生家で開いた9月の朗読会に続き、奈良での朗読を終えた金城さんは「この数年、沖縄に対する差別的な発言が相次ぐなか、受けて立つ、という思いで仕上げた。水平社宣言から100年、復帰50年。まさに今、時を得た」と、語った。今後出版に向けて準備を進めるという。

 「披露する会」で事務局を務めた崎浜さんは「水平社宣言を単なる有名な文章、ということで終わらせず、実践していかなければ。母語を取り戻し、人権や尊厳を取り戻していくことは、われわれウチナーンチュに求められている」と力強く語った。