献立作成とW杯監督の采配 喜屋武ゆりか(沖縄大学健康栄養学部講師)<未来へいっぽにほ>


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喜屋武 ゆりか(沖縄大学健康栄養学部講師)

 私たちにとってなじみ深い給食。でも献立のたて方をご存じの方は、そう多くないだろう。

 給食は文部科学省が定めた学校給食摂取基準を満たすよう、各調理場の管理栄養士が栄養価を計算して献立をたてる。給食は1日に必要な栄養素の3分の1を基準値とし、子どもたちの食生活調査からみえた不足・過剰傾向にある栄養素と量を調整するように設計する。例えばカルシウムは大半の子どもが不足しているため、1日必要量の50%を提供する。

 栄養士は、栄養素をさまざまな食品群(野菜、豆、種実、果実、きのこ、海藻、魚介、小魚、肉、卵など)からバランスよくとれるようにする。それだけではない。環境や食文化の継承を意識して、地場産物を多く使用し、琉球料理や行事食も盛りこむ。1食250円前後と限られた予算で献立を考えなければならないのも難しい。

 さらに栄養士の力量が問われるのが、作業量の調整だ。例えば、作業量が多い冬瓜を使う日は、カット不要なみかんをデザートにする。経験豊かな調理員から助言をもらうことも多い。給食は数百~数千食を3時間程度で調理しなければならない。給食時間に遅れることは厳禁だ。数々の課題を考慮しながら、理想と現実のベストマッチが日々の献立となる。

 W杯で奇跡を起こした森保監督の采配の奥深さを素人の私が容易に語ってはいけないが、さまざまな要素を考慮し、安定の上にチャンスを生み出していくというプロセスは献立作成と通じるものがあるかなと想像した。日々、重責の決戦を走り抜く給食従事者の活躍にも心から称賛したい。