越来グスクの情熱 石井恵理菜(中部報道グループ)


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written by 石井恵理菜(沖縄市、北中城村担当)

 ロックやエイサーといった華やかな文化・芸能が多い沖縄市。その華やかさの反対側にあるのが「越来グスク」に違いない。後に琉球国王となった尚泰久らの王子時代の居城として知られるが、沖縄戦の砲撃や戦後の開発などで、遺構も含めほとんどが消失した。城壁もなければ面影もなく、知名度も低い。なんだか切ない。

 一方で、越来グスクは2019年に国の名勝「アマミクヌムイ」に追加指定されたことで、盛り上がりを見せている。調査研究を進める沖縄市立郷土博物館はその価値を活用しようと、整備計画を策定中だ。ただ城を復元できるような史料はなく、模型も作れない。形がない物をどう周知し、保存するかが課題だ。

 先日、整備計画についての地域説明会があった。「越来グスクを感じられるレプリカを作ろう」「模型はどうだろう」。目を輝かせ、アイデアを語る住民たち。歴史に忠実でなければいけないため、困った表情で「それは難しいですね」と返答する学芸員。両者が繰り広げる闘いに、なんだか胸が熱くなった。

 越来グスクの研究は今後も続く。地域住民のパワーはその後押しになるだろう。今は決して華やかな存在ではないが、いつの日か誰もが知る存在になるはず。地域を思う住民らの情熱と、学芸員の強い信念を見ていると、そう確信できる。

(沖縄市、北中城村担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。