【記者解説】基地内調査と汚染浄化、沖縄県の要求を拒否 米軍、自国ルールも無視 PFAS除去


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 有機フッ素化合物(PFAS)が米軍基地周辺で検出されている問題で、県と沖縄防衛局、米空軍嘉手納基地が2018年に開いた連絡会議の場で、米側は「発生源対策が必ずしも活性炭による対策よりも経済的とは考えていない」と発言していた。発言は米軍が自国ルールを無視し、県が求める基地内調査と汚染浄化を拒否した姿勢といえる。

 PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、自然界では分解されない。汚染源の特定と除去が解決の鍵だ。県は嘉手納基地が汚染源の蓋然(がいぜん)性が高いと指摘してきた。

 21年に公開された米環境保護庁のPFASに関する戦略ロードマップでは、汚染の解決には川の下流のみでなく、上流にも目を向ける必要があると指摘。汚染源の特定が重要であることが分かる。18年の連絡会議で米軍は「(県の)企業局がきちんと対応している」として基地内調査を否定した。だが、県は現在も基地内調査を求めており、米政府機関が示す指針に反する状況が続いている。問題解決には米軍の協力が必要だ。

 連絡会議は米軍の申し出により終結した。他方、県によると、問題は環境省を通して日米合同委員会で議題に上がっているという。だが、合同委は非公開。中身は分からず進展も見られないという。

 日本政府は20日、PFASの一種、PFOSとPFOAを健康と環境に被害を生じる恐れがある「指定物資」とする水質汚濁防止法施行令改正を閣議決定した。流出事故があった場合に、都道府県への通報や応急措置を義務付けた。だが、自然にほとんど分解されず、食物連鎖で濃縮されてしまうPFASは、過去の汚染をしっかり除去しなければ健康被害を招く可能性がある。

 流出事故を通報する判断も米軍の裁量に委ねられており、浄化に向けた実行力のある対応はまだまだ不十分だ。
 (名嘉一心)