「子どもが意見を発信できる環境を」子どもの権利条約フォーラム 子どもから大人までが議論


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 国連で採択された「子どもの権利条約」実現と普及を目指し、「子どもの権利条約フォーラム2022」(同実行委員会主催)が10、11の両日、沖縄大学で開かれた。10日に行われた「子どもと大人、一緒に創る未来予想図」をテーマにしたメインセッションと、学校での課題を議論した分科会の内容を紹介する。

多様に学べる学校に

社会や教育のあり方について意見や疑問を語る子ども代表ら=10日、那覇市の沖縄大

 メインセッションでは小学生から高校生までの子ども代表も発言した。

 フォーラムの企画に携わってきた通信制のN高2年の久保田玲仁さんは、少子化や貧困問題などで「子どもの声が小さくなる現状がある」と話し、「子どもや大人の枠を超え、一人の人間として意見を発信できる環境をつくりたい」と報告。

 社会について学ぶ場が足りない現状を「学習の貧困」と指摘する高校生団体Lux(ルークス)の照屋雄大さんの意見には、NPO法人フリースペースたまりばの西野博之理事長が、生きる力や人と関わる力は遊びを通して身に付くと説明、「明治以来変わらない学校教育は破綻している。学校は多様に学べる場所であってもいい」と応えた。

 ボランティア団体LadyBugの西平彩珠さんは、ボランティア活動について「大人は(進路のための)実績としか評価してくれない」と、純粋に楽しんでいる気持ちを重視してほしいと訴えた。「フリースペースくじらぐも」の清水陽渚太さんは、コロナ禍でもマスクがないために学校に行けない子の居場所を作りたいと目標を語った。

 おきなわ子ども未来ネットワークの山内優子代表は、条約が目指すものと現状について「遅れているのは子どもの意見表明であり、大人が聞くことが重要。また、虐待や貧困の中で声を出せない子もいるので、声を出せる子が拾って代弁してほしい」と期待した。

 前回のフォーラムにも参加した西野さんは「大人がよかれと思ってやらせる上から目線の感覚に子どもは苦しんでいるので、語りたいことを語れる環境づくりをしないといけない。フォーラムを通して、子どもの持つ力を発信できる社会づくりが問われている」とディスカッションを振り返った。大人代表には、臨床心理士の岸本琴絵さんや、コーディネーターとしてみらいファンド沖縄の平良斗星氏も登壇した。
 (嘉陽拓也)

学校の先生に余裕を

分科会で学校現場での子どもの権利について意見を交わす教員、保育士や学生ら=10日、那覇市の沖縄大

 県民間教育研究所が主催した分科会では「子どもは学校で子どもの権利が守られているか。守られていないとしたらなぜなのか」をテーマに教育者や学生、行政職員らが7グループに分かれて、学校現場での子どもの権利について議論した。

 学校現場で子どもの権利が守られていない理由として、教員の業務過多やルールを守らせようとという教員の意識が強すぎるといった指摘が上がった。

 グループ内では、先生から休み時間に遊ぶ場所を聞かれた子どもが教室の中で遊ぶと答えると、立たされて「外で遊びなさい」と言われたことがあったとの声があった。

 テストの結果が悪いとして給食の時間まで怒られ、食べる時間が少なくなってしまった経験をした子どもがいたという報告もあった。

 ある参加者は「先生に子どもを守る余裕がない。先生が間違えても同僚や周りの大人が寛容な視線を向けることが教育を変えるのではないか」と話した。

 学校現場で「子どもの権利条約」についての認識を広め、子どもが自分の権利を主張できる環境をつくる必要があるとの意見も出た。
 (中村優希)