低所得者の入居、ハードル下げて 司法書士会「住まいの貧困」講座、「要保証人」が壁に、オーナーの理解進まず


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住まいの貧困について意見を交わす登壇者ら=11月27日、オンライン

 県司法書士会はこのほど、復帰50年市民公開講座「住まいの貧困を考える」をオンラインで開いた。追手門学院大学地域創造学部の葛西リサ准教授が基調講演した。リレー報告では、県母子寡婦福祉連合会の小那覇涼子さんやNPO法人ファミリーサポート愛さん会の平良博子代表、県司法書士会の安里長従さんらが活動を通して見える住まい探しの課題を挙げ、意見交換した。

 葛西さんは、生活困窮者の住宅確保状況などを紹介した。日本の住宅は6割が持ち家、3割が公的補助のない民間賃貸住宅で、低所得者向けの公営住宅は4%程度となっている。低所得者は民間賃貸を探さざるを得ないが、連帯保証人が必要で入居のハードルが高い。低家賃で入居できても環境が悪く、子どものアレルギーなどが悪化し、看病のため母親が働けない悪循環に陥る場合もある。

 葛西さんは近年深刻化している課題として、法的な手続きをせずに家を出るなど事実上離婚状態にある「プレシングルマザー」を挙げた。離婚の手続きをしていれば受けられる補償などが受けられず救済しづらい側面がある。「危機的状況の人が多く、住宅をいかに保障するか考える必要がある」と話した。

 母子寡婦福祉連合会の小那覇さんは県内の母子世帯について、92・1%が就業しているが年間就労収入が全国平均より低い187万円と、不安定な経済状況を紹介。ひとり親家庭を支援する「ゆいはぁと事業」で、住宅や家計支援などを実施している。那覇市は住宅確保要配慮者の入居を拒まないとして登録されている住宅が3300戸ある。しかしほとんどが特定の不動産会社の物件で、一般不動産やオーナーへの浸透の薄さが課題となっていると報告した。

 ファミリーサポート愛さん会の平良代表は、住居のない生活困窮者を対象に一時生活支援事業を実施している。アパート賃貸契約のための連帯保証人の確保が困難で、生活支援から自立できずに滞留する相談者がいるのが課題となっている。

 県司法書士会の安里さんは、生活困窮者の入居のハードルとなる保証人について、県や12市町村で保証人を廃止したが、沖縄市や名護市など公営住宅の需要が高い地域では保証人が必要で、廃止を求めていくとした。
 (中村優希)