沖縄の平均寿命、順位下落続く…識者はどう見るか


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 厚生労働省は23日、2020年都道府県生命表を発表した。沖縄の平均寿命の順位低下が続く現状に、医療関係者らは、県民一人一人が生活習慣病のリスクと向き合う重要性を強調した。 

 


健康長寿の意識向上を 益崎裕章教授(琉大大学院医学研究科)

 死因別死亡確率では、医療レベルの向上でがんや肺炎など治せる病気の順位が下がったことは褒められる点だが、対照的に生活習慣病を背景にした肝疾患や糖尿病が男女とも上位になっている。

 個人的にはショックな結果で、平均寿命は1位だった1985年から35年で最下位あたりまで滑り落ちたことになる。2020年のデータなので現在はより深刻だろう。

 肥満症や酒などによる肝疾患や糖尿病、腎不全などはいずれも血管を痛める病気で、コロナによる死亡確率が男女とも1位になっていることも影響しているだろう。

 新興感染症である新型コロナの流行により、重症化して命を失うほど健康状態が悪い人が他県より多いということが、今回の結果であぶり出されたとも解釈できる。

 健康長寿に取り組む県の姿勢は評価できる。県民一人一人の健康への意識の向上が期待され、会社や学校でもさらなる啓発が必要と言える。 (談)

 

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有所見率も全国最悪 田名毅氏(県医師会副会長) 

 県内ではコロナ禍前から65歳未満の死亡割合が高い。生活習慣病の管理状態が悪く、高血圧を放置した結果、心筋梗塞やくも膜下出血などが増えていた。県医師会は、2017年から65歳未満健康・死亡改善プロジェクトを進めてきた。

 ただ、コロナ禍で施策が滞っており、今回の結果を受け、改めて県民に生活習慣病の重要性を訴えていきたい。

 県内では定期健康診断で何らかの異常が見つかる「有所見率」の全国ワーストが続いている。県内は中小企業が多く、健診へのアクセスが低い。業務が忙しく、治療に取り組めない人も一定数いる。

 企業や自営業、家庭の主婦まで健診を受ける機会を底上げしないといけない。若い世代の死亡リスクが上がることは、家庭や職場だけでなく、子どもにまで影響がでる。大黒柱が倒れる不幸な事態にならないよう、いま一度、生活習慣病に向き合う施策に力を入れていきたい。 (談)