【記者解説】沖縄振興の予算、昨年度と対照的な編成経過 「国主導」の差配、顕著に


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 2023年度の沖縄関係予算は、前年度から大幅な増減がないままに決着した。沖縄の日本復帰50年の節目を前に、今後10年の沖縄振興計画の根拠法となる改正沖縄振興特別措置法の策定など、懸案が山積する中で迎えた22年度の予算編成とは対照的な経過をたどった。

 一方で、ここ数年続いた振興策を「県主導」から「国主導」にする傾向はより顕著になった。

 象徴的なのが、明暗が分かれた「沖縄振興一括交付金」と「沖縄特定事業推進費」の扱いだ。県が使途を決められる一括交付金は、「沖縄の自立的発展」という沖縄振興の理念に沿って第5次振興計画の策定時に制度化された。21年度に大台の1千億円台を割り込んで以降も減額に歯止めがかからず、過去最低を更新。一方、19年度創設のソフト交付金を補完する国直轄の推進費は、概算要求から異例の増額で、過去最多を計上した。県の頭越しに差配できる交付金を増やし、県の権限が効く交付金を減らす意図について政府側から明確な説明はない。

 一括交付金の減額は、道路や学校施設などのインフラ整備の遅れにつながるなど弊害も出ている。政府は、23年度の予算編成や政策の指針となる「骨太方針」で、沖縄振興を「国家戦略」と位置づけている。沖縄振興の趣旨である「沖縄の自立的発展」に外れる「国家戦略」であってはならない。

(安里洋輔)