「見せる復興」推進、防災や美術品修復に残る課題 首里城正殿着工<沖縄この1年2022>③


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御材木を載せ、首里城に向かう木遣行列=3日午前、那覇市(小川昌宏撮影)

 2019年10月の火災で焼失した首里城正殿の再建に向け起工式が11月3日に開かれた。沖縄総合事務局などは26年秋の完成を目指す。初期消火に失敗した3年前の教訓を生かし、国や県、指定管理者の沖縄美ら島財団は防火設備や体制を強化。ただ防災対策面の人材育成や焼失した美術工芸品修復などに課題が残る。

 起工式で岡田直樹沖縄担当相、玉城デニー知事らが正殿に使用する国頭村産の「御材木(おざいもく)」(オキナワウラジロガシ)にノミ入れした。玉城知事は「首里城の復元を願う県民や国内外の皆さんの思いの結実に向けた大きな一歩だ」と述べた。

 4トンの御材木を積んだ低床トレーラーは10月29日に調達先の国頭村を出発、県内各地を巡った。那覇市の国際通りでは世界のウチナーンチュ大会と連動したパレードにも登場した。起工式当日は御材木を首里城に運び込む儀式「木遣(きやり)行列」や、琉球国王の参詣を再現する古式行列もあった。

 「令和の復元」は火災前の首里城よりも県産木材を多く使用。スプリンクラーや連結送水管に接続する放水口を新設するなど、防火設備・体制を強化する。国や県は「見せる復興」を掲げ、復元過程や職人の技術を一般公開しながら進める。総工費は防火設備も含め約120億円を見込む。

 一方で指定管理者制度は数年で管理者が交代する可能性もあり、防災の要となる人材のノウハウ継承が課題だ。県の「首里城公園管理体制構築検討委員会」でも議論された。兵庫県の姫路城の対応を参考に、管理者制度から防災面を切り離して公務員が直接管理する手法も提案された。沖縄美ら島財団も防災危機管理室を設置し、防災訓練を実施するなど体制強化に努めている。

 美術工芸品は正殿内にあった漆器などに大きな被害が出た。修復作業は専門家の知見を得て慎重に進める必要があり、全ての作業を終えるまでに20~30年かかるとの見通しもある。

(宮城隆尋)