【深掘り】世界的流行に警戒続く 沖縄・金武の鳥インフル防疫措置完了 「人の防疫対策」徹底が最重要


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
金武町の養鶏農場で発生した高病原性鳥インフルエンザの防疫措置のため農場内に入る県職員ら=16日午後、金武町(大城直也撮影)

 4万5千羽が飼われていた金武町の養鶏農場で発生した高病原性鳥インフルエンザは、鶏の殺処分や焼却、物品の消毒といった発生農場での一連の「防疫措置」が完了した。ただ、高病原性ウイルスは隣県の鹿児島県をはじめ全国各地で依然猛威をふるっている。冬の渡り鳥が国内に滞在する10月から5月の期間がリスクの高いシーズンで、沖縄でも警戒が続く。

 野鳥から感染か

 これまで例がなかった沖縄で初めて発生が確認されたのは、世界的な流行を背景に感染した野鳥のウイルスが広がっているためとみられている。
 ウイルスは越冬のためロシア方面から南下するカモ類など渡り鳥が持ち込み、ほかの動物に広がる。国内の養鶏場で過去最多のペースで発生が続いていることに関して、鹿児島大の小澤真准教授(ウイルス学)は「過去よりウイルスを持ってくる鳥の集団の勢力が拡大していて、横に広がる力も強い」と説明する。

 沖縄野鳥の会によると県内に飛来するカモ類は10種類ほどで、近年は増加傾向だが今季は昨年ほど見られてはいない。山城正邦会長は「カモの飛来数よりも、世界的に感染が拡大していることが大きい。これまで感染した野鳥がいても、養鶏場での発生には至らず気付いていなかっただけかと思う」と指摘する。金武町の発生現場は近くに渡り鳥が多く飛来する水田があり「以前から危惧していた」という。

 「豚熱」の反省

 養鶏場での発生リスクを抑えるためには、野鳥の死骸をいち早く見つけて回収、検査につなげることや、ウイルス侵入を防ぐ対策が必要になる。

 金武町の農場のように、野鳥が侵入できない窓なしの鶏舎にもかかわらず発生する事例は、県外でも相次いでいる。ウイルスの「運び屋」としてネズミなどの小動物のほか、ハエの可能性を指摘する研究もある。小澤准教授は「飼養衛生管理基準の順守などは前提として、鶏舎を一番出入りする、人の防疫対策の徹底は一番重要になる」と話した。

 発生時の迅速な封じ込めも不可欠だ。2020年1月に県内で34年ぶりに豚熱が発生した際は、防疫措置で関係団体の連携がとれず、現場の混乱や作業の遅れが課題として残った。県はその後、発生時の資材運搬や消毒作業などについて関係機関と連携協定を締結。今回の金武町での鳥インフル発生では、農家からの通報に遅れはあったものの、全体としては豚熱の反省が生かされた形だ。県の担当者は「作業自体はスムーズに移行できた」と振り返った。
 (當山幸都)