沖縄県内への避難者、官民で支え ウクライナ侵攻<沖縄この1年2022>②


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先にウクライナから沖縄に避難していたコマハ・ルドミラさん(手前)に呼び寄せられて来沖し、再会を喜ぶ夫のボロディミィルさん=7月29日、那覇空港

 2月24日、ロシア軍が隣国ウクライナの侵攻を始めた。ミサイルによる空爆や地上部隊の攻撃によりウクライナの街は破壊され、多数の死者が出た。77年前の沖縄戦を経験し、平和を願う県民は、武力を行使するロシアを糾弾し、沖縄から反戦の声を上げている。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告によると、侵攻開始から12月18日までに把握できたウクライナ側の民間人の死傷者は1万7595人に上る。被害のほとんどは、重砲による砲撃やミサイル攻撃、空爆など広範囲に影響を及ぼす爆発兵器によるものだという。

 ロシア、ウクライナ両軍の死傷者は全体像が明らかになっていないが、それぞれ10万人を超えるとの見方もある。

 沖縄戦の体験者や県内の平和団体は、街頭でメッセージボードを掲げたり、集会を開いたりと、さまざまな手法で戦争の勃発直後から反戦を訴えている。県民はそれぞれの立場で、沖縄戦を経て得た教訓「命どぅ宝」を世界に届けようとしている。

 ウクライナ国内で生活するには命の危険があり、1500万人以上が国境を越えて国外に避難。避難民は沖縄にも訪れた。

 県によると、12月22日現在、県内に滞在するウクライナの避難民は16世帯23人。避難生活の中で日本語を学び、生活に溶け込もうと努力する。県は公営住宅を供与しているほか、民間の企業や団体などが物資の提供や寄付、生活援助などに取り組み、官民で生活を支えている。

 「世界の食料庫」とも称される農業国ウクライナの危機は、世界各地で穀物価格の高騰を誘発した。円安なども重なり、燃油や穀物、肥料原料などの価格は相次ぎ高騰し、県内産業も苦境に立たされている。

 ロシア軍の侵攻から10カ月が経過したが、いまだ終戦の見通しは立っておらず、ウクライナの危機は続いている。
 (稲福政俊)