乱獲で漁獲量ゼロ…沖縄のウニ復活へ新技術 完全循環型で陸上養殖、飼料に廃棄海藻


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 1970年代のピーク時には漁獲量が2千トン以上あった県内のシラヒゲウニだが、乱獲の影響で、近年の漁獲量はピーク時の千分の1の2トン程度まで落ち込んだ。さらにこの数年は0トンが続き、資源保護のために禁漁を解除できない状態が続く。県内では生育量回復のために稚ウニの放流も行われてきたが、個体数の増加にはなかなか結び付いていない。養殖による供給に向け、新たな技術や知見の導入が始まっている。 (島袋良太)


<エイム沖縄支店>循環型 陸上で養殖可 車部品技術、水温管理に応用

水質を管理した完全陸上養殖でシラヒゲウニの安定供給養殖を目指すエイムの大金良彦取締役=20日、うるま市石川赤崎の市IT事業支援センター敷地内

 【うるま】自動車部品開発などを手掛けるエイム(愛知県)の沖縄支店は、うるま市IT事業支援センター敷地内でシラヒゲウニの完全陸上養殖を始めた。昨年11月に1億1千万円を投じ、48トン分の水槽を設置。2023年3月に初出荷の予定で、初年度に5~6トンの出荷を見込む。

 自動車関連部品の開発が本業のエイムは、水温管理に関する知見を生かし、中古の保冷コンテナ内に水槽を設置して水温を25度以上に保つ。ウニの食欲が落ちる冬も成長速度を保てるといい、通年で出荷できる体制を目指す。

 ウニ養殖場は通常、海沿いに整備して付近の海を活用して排水や給水をすることが多い。一方、エイムの養殖場は「好気脱窒」と呼ばれる技術を用い、養殖で発生する汚水の毒素(アンモニア)を浄化し、浄化水を再び活用する「完全循環式」の手法を用いているのが特徴。これにより、海と離れた場所でもウニの養殖ができるという。

 エイムの大金良彦取締役によると、県内漁協による施設視察も行われている。将来的には自社による養殖だけでなく、設備をパッケージで売り出すことを目指していると説明した。海の近くに設置する場合は完全循環ではない「掛け流し式」や「一部閉鎖循環」といった方式も活用し得るとし、それぞれの利点を組み合わせながら県内のウニ養殖を普及したいと説明した。

<県海洋センター>飼料に廃棄海藻、植物

玉城 英信氏

 シラヒゲウニ養殖の課題の一つである餌の調達について、県水産海洋技術センターの玉城英信主任研究員(県栽培漁業センター前所長)は、海中から天然の海藻を採取する代わりに、廃棄されたり流れ着いたりした海藻や、陸上の植物などを活用した配合飼料を開発した。生きた海藻を刈り取ることによる環境へのダメージを防げ、生産コストの削減にもつながるとして、養殖現場に普及を図る考え。

 玉城氏は配合飼料の開発に際して、クルマエビ養殖場で廃棄されるスジアオノリ、フコイダンの抽出に使われるモズクの残りかすなどを活用。また海岸に流れ着いて漁船のプロペラに絡みつくアカモクという海藻も活用した。

 おいしそうな色味を着けるためにベータカロテンが必要と考え、廃棄される規格外品のニンジンやカボチャを活用。これによりオレンジ色が強い身にできたという。栄養素としてクワの葉やうまみ成分であるアルギン酸ナトリウムも追加し、シラヒゲウニの食欲を刺激し、保形性が高い餌ができた。

 配合飼料づくりは3年前に着手し、2021年度に完成した。実験段階で十分な実入りも確認できたため、普及を図る段階に入った。玉城氏は「1キロ当たり266円から617円程度で飼料ができる。廃棄される材料も活用してコストを抑え、質の高い身もできる」と説明した。