沖縄県内の自殺者249人、前年上回る コロナ後増加に 「沖縄いのちの電話」相談員不足も深刻


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2022年の県内の自殺者が11月末時点で249人に上り、前年1年間の総数を上回ったことが、9日までの警察庁の集計で分かった。一方、孤独や悩みを抱えた人に寄り添う「沖縄いのちの電話」(午前10時~午後11時、電話098・888・4343)の相談員不足が深刻に。22年も多くの相談電話がかかってきたが、実際に受けることができたのは2割ほどという。事務局は「電話がつながっていれば、自殺を踏みとどまった人もいたかもしれない」とし、相談員の養成に力を入れる方針だ。

 警察庁によると、県内の自殺者は11年の387人以降、減少傾向が続き、20年は214人まで減少していた。新型コロナウイルス禍の21年は増加に転じ、前年より32人多い246人に。22年は11月までの暫定値ながら、すでに前年の総数を上回っている。

 対照的に、沖縄いのちの電話への相談電話は20年の7140件以降、6470件(21年)、4782件(22年11月時点)と減少。その要因について渡久山朝裕事務局長は「相談員不足で電話回線を減らさざるを得なくなったため」と説明する。

 この間、新型コロナの影響で相談員養成講座が中止となったり、規模縮小を余儀なくされたりしてきた。現在、70~80人が相談員として活動中だが、相談員不在の時間帯も発生しているという。

 寄せられた声は深刻だ。昨年の電話のうち、17・4%が「もう生きていたくない」「望みがない」など自殺志向の内容で、精神疾患を訴える電話が多かった。男女比はほぼ半々だった。渡久山事務局長は「コロナ禍で人間関係が寸断(すんだん)され、孤独を感じた人が多いのではないか」と指摘する。

 年度末は自殺者が増える傾向にあるとし「物価高による生活苦の増加」を懸念。「複数の要因が重なると(命を)投げ出したくなる。つらい悩みを抱えた人と電話でつながり、生きる支えになりたい」と力を込める。

 相談体制の拡充に向け、沖縄いのちの電話は相談員養成講座や勉強会を重ねている。春ごろからは、23年度の養成講座も受講生を募集する予定だ。
 (眞崎裕史)


 毎月10日は通話無料に

 沖縄いのちの電話への相談は無料だが、通話料は有料となっている。ただ、毎月10日は午前8時からの24時間、日本いのちの電話連盟の加盟団体がフリーダイヤル(0120・783・556)で対応。また、新型コロナ禍を受けて、毎日午後4~9時も通話料無料で対応している。