静と動、めりはりと緊張感「北山敵討」 伝統組踊研究会の08年復活上演台本で上演 国立劇場おきなわ


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本部大主(前列左・玉城盛義)を捕らえる謝名之大主(前列左から2人目・宇座仁一)、北山之若按司(右から3人目金城真次)一行=2022年12月17日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわの組踊公演「北山敵討(ほくざんてきうち)」(島袋光晴立方指導、中村一雄地謡指導)が12月17日、浦添市の同劇場であった。16人の立方が出演し、上演時間が2時間を越える長編作品。本公演では、伝統組踊保存会が2008年に復活上演をした際の台本で上演した。観客は、静と動のめりはりがついた演出と緊張感のある芝居を通じて、大作を楽しんだ。

 「北山敵討」は、本部大主(玉城盛義)に父・北山按司を殺された北山之若按司(金城真次)と、家臣の謝名之大主(宇座仁一)があだ討ちを果たす物語。

 本部大主が若按司を探し出して殺すよう家臣・謝花大主(平田智之)に命じる一場は、盛義の威厳ある振る舞いと平田の巧みな受けの芝居が、展開に期待を抱かせた。あだ討ちを果たすために、若按司が妹・思鶴(宮里光也)を雪や霜の降る山道に置いていこうとする二場は、若い立方によるみずみずしい唱えと歌三線が調和し、涙を誘った。

謝花大主(右端・平田智之)らに、若按司の身代わりとして捕らえられた虎千代(左から3人目・宮城茂雄)と里村(左端・佐辺良和)

 三場では謝名之大主と息子・里村(佐辺良和)が、若按司と再会し、思鶴も家臣の働きで助かる。若按司と同じく本部大主に父を殺された家臣・虎千代(宮城茂雄)とも合流する。四場では間の者(まるむん)役の漁師・加那筑(嘉数道彦)が登場し、本部大主の捜索が迫っていることを一行に告げる。舞台をはね、せりふを言うひょうきんな所作に客席が沸いた。

 四場で虎千代が、身代わりになることを進言し、若按司と言葉を交わす場面は、最も見応えがあった。早い口調で長いせりふを、流れるように言い合うさまは心地良かった。あだ討ちが果たされる七場まで、一定の緊張感と共に演じ、最後まで観客を楽しませた。

 二場最初の「子持節」は、立方の心情に引き寄せるようなカナ掛け(せりふに歌を重ねる組踊の様式)と歌声で聞き応えがあった。一方で、続く「子持ち節」は弱く、地謡の力量にばらつきが見られた。一部立方が早々にせりふに詰まり、終盤まで引きずっていたのが惜しまれた。

 出演はほかに田口博章、親泊久玄、大湾三瑠、伊藝武士、比嘉大志、嘉数幸雅、髙井賢太郎、知花令磨。歌三線は仲村渠達也、仲田知広、謝敷アンヘル、新垣勝裕。箏は町田倫士、笛は宇保朝輝、胡弓は運天伊作、太鼓は久志大樹。
 (藤村謙吾)