【深掘り】米国の意向優先、鮮明に 日米首脳会談 沖縄の負担軽減、具体策なく 県民の安全置き去りに


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 岸田文雄首相とバイデン米大統領は13日(日本時間14日)、米ワシントンで会談し、日米同盟の強化方針を確認した。首脳会談に先立って開かれた日米外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)、防衛相会談を含めた一連の会談では、沖縄の負担軽減策の具体化や国民への丁寧な説明よりも、対中国戦略で日本の役割拡大を望む米国の期待に応えることを優先しようとする日本政府の姿勢が、改めて浮き彫りとなった。

 「バイデン大統領から全面的な支持を得た」。首脳会談に関する記者団への説明で、木原誠二官房副長官はこう強調した。岸田首相が会談で敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を含む防衛力の抜本的強化、そして防衛予算の増額について報告した際の、バイデン氏の反応を説明した。

 2022年5月に日本であった日米首脳会談で、岸田首相は「防衛力の抜本的な強化」と「防衛費の相当な増額」を約束していた。政府は「国際約束」(政府関係者)と位置付け、国内の根強い反対や警戒感にもかかわらず強力に推し進めてきた。22年12月に改定した国家安全保障戦略を、その2カ月前に公表された米国の国家安全保障戦略と「軌を一に」(木原氏)する内容でまとめた。

 14日の首脳会談では岸田首相からバイデン氏に直接、これらの進展を伝えた。防衛省関係者は「我が国の生存に日米同盟は必須だ」と語った。

 具体的な日米同盟の強化策の多くは12日の2プラス2で示された。説明資料では沖縄の基地機能を「強化」する計画が記載され、施設の共同使用や演習の増加によって沖縄の負担が増大することが予想される。一方、新味のある負担軽減策は最後まで示されなかった。

 そもそも、日米両政府が従来示している「負担軽減」の方法は、普天間飛行場の名護市辺野古への移設など、負担を固定化すると県民からの強い反発を受けてきた。2プラス2の共同発表では、事件・事故に関する情報共有や環境問題に関する協力も盛り込んだが、具体的な改善策は示していない。

 防衛省幹部は「これから具体的に防衛力強化の計画を進めていく中で、どんな軽減が必要かという議論も出てくる」と語った。現状でも過重な基地負担に苦しむ沖縄にとって、「有事」対応のために日米が一体となって防衛体制が強化される中で、県民の安全確保や負担軽減が置き去りにされることが懸念される。

(明真南斗)