島の小さな本屋さん「ある日、」に注目 沖縄に移住して開業、作家を招いたイベントも 浜比嘉島


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本屋「本と商い ある日、」を営む高橋和也さん=10日、うるま市勝連比嘉

 【うるま】うるま市の浜比嘉島に昨年オープンした本屋「本と商い ある日、」が注目を集めている。東京でも本屋を経営する高橋和也さん(36)=うるま市=が培ったネットワークを生かして著名な作家を招いたイベントを開くなど、ユニークな企画を展開。8、9の両日には翻訳家の柴田元幸さんの朗読会があった。

 高橋さん一家の生活の仕切り直しが開店のきっかけで、家族と客とともにつくる本屋を目指す。島の小さな本屋が、強みを生かして存在感を発揮している。

 千葉県出身。大学時代に書店に勤める傍ら、本屋の開業を目指した。2009年から勤めた東京の大型書店では自ら選書した本棚を作るなど経験を積み、13年に東京・学芸大学駅近くに本屋「SUNNY BOY BOOKS」を開いた。

 コロナ禍が沖縄に移り住む転機に。多忙な夫婦共働きの中、オンライン注文が増えて子育ての余裕がなくなった。ある日、夜中に帰宅すると、散らかった部屋で疲れ果て寝ている妻を1歳の子どもが泣きながらさすっていた。「このままではいけない」と苦しみ、東京から離れる話を夫婦でするようになった。妻が故郷・沖縄で就職先を見つけ、21年に家族で引っ越した。

 22年7月に「ある日、」を開店。ある日の積み重ねが生活をつくっており、来た人の“ある日”になってほしいという意味を込めた。家族との生活が本屋の土台になっている。「ともにある」をコンセプトに、フェミニズムや福祉関係の本が多い。沖縄本や独自出版本、イベントに関係する作家の本や雑貨なども並ぶ。

 昨年9月時点で書店がない市町村の割合は沖縄が56・1%と全国で最も高い。高橋さんは「那覇市に書店が集中している。中部から本屋の文化を押し上げたい」と意欲を見せる。初めて訪れた那覇市の男性は「島の雰囲気に合っている。浜比嘉に来る理由ができた」と喜んだ。

 今後は沖縄の作家のイベントを予定。3月は沖縄を拠点に活動する真名井大介さんの朗読会がある。「ともにあるは、沖縄でお客さんとともに本屋をつくりたいというメッセージでもある。開かれて、安心して来られる場所にしたい」と語った。 (古川峻)