大切にしたい言葉 比嘉璃子(南部報道グループ)<ゆんたくあっちゃ~>


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written by 比嘉璃子(南部報道グループ)

 冷たい風が肌をなで、寒くて気持ちのいい日だった。「It feels lekker」。オランダの友人と英語で話していた時、適当な表現が見つからず、“lekker(オランダ語で心地よい、おいしい)”と伝えた。英語でも言い換えできるが、「意味が微妙に変わる。寒いのが『心地いい』のはオランダならではかもね」と友人と笑い合った。

 取材をしていると、ウチナーグチに遭遇する。「じょーとー」「がんじゅー」など生活の中で親しまれる言葉だ。取材対象者に話し方を合わせた方が距離を縮められる気がして、私も会話の中で思いつく限りのウチナーグチをちりばめる。

 記事を書く時もウチナーグチを使う方がニュアンスを含め、日本語に比べて多くの意味を伝えられることがある。そんな時は最小限の和訳を併記する。無理に訳して本来の意味を損なうなら、取材対象者の思いをありのまま伝えたい。

 言葉にこだわる理由がもう一つある。言葉は文化やアイデンティティーと深く関わる。地域密着型で時代を映す地方紙だからこそ、言葉の使われ方や消滅の危機にある言葉を記録しておきたい。数十年後、子や孫が新聞を読み返した時に言葉の意味を知り、沖縄の文化や歴史に興味を持つきっかけになればうれしい。

(糸満市、南風原町、粟国村、渡名喜村担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。