「探しているが見つからない」学校産業医配置、沖縄が全国最下位 市町村教委、確保に苦心


社会
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厚生労働省が推奨しているストレス調査票

 メンタルヘルスの不調を抱える教員が増加する中、県内の公立学校では、産業医の配置が立ち遅れている実態が明らかとなった。法令上、産業医の選任が義務付けられている市町村の教育委員会からは「探しているが見つからない」など、産業医確保に苦心する声が続出。「旗振り役として県のサポートが必要だ」などの声も上がった。

 産業医は労働者の健康管理に対し、専門的立場から指導や助言を行う。教職員50人以上が働く学校では、産業医を選任する必要がある。

 「見つからない」

 那覇市は県内最多の計20校が、産業医選任の義務対象となっている。しかし実際は衝撃のゼロだ。同様に産業医による学校巡視やストレスチェック後の面談など「法が定める業務ができていない」(市教委)。2023年度は産業医を選任・配置できるよう、予算化を予定しているという。

 対象校が4校の名護市も選任できていない。同市教委によると、原因は報酬金額。市の規則は日額4万5千円と定めているが、委嘱を予定する産業医の希望額と開きがあるという。今後規則を改定し、来年度は選任ゼロを解消する方針だ。

 うるま市も対象校が7校あるが「産業医が見つからない」として選任できていない。対象校1校の西原町は「要綱などを作成する職員のマンパワー不足」を理由に挙げた。

 「旗振り役に」

 産業医を辛うじて選任できた自治体からも「人材難」の声は相次ぐ。

 糸満市では小中5校を1人の産業医がカバー。南部地区医師会に「増員」を要請しているが、良い返事はない。中城村は中部地区医師会を通じ、今月に入ってようやく1人確保できたという。

 一方、10校で教職員50人以上が働く沖縄市では、4人の産業医に委嘱。市内の全学校を4ブロックに分け、学校規模に関係なく、それぞれに産業医を配置している。「学校の先生は長時間勤務で、いつ体調を崩すか分からない。早い段階でサポートしたい」と市教委の担当者。産業医は個人的なつながりで探したという。

 県教委は19年に教育長名で、市町村長と教育委員会に対し、労働安全体制の整備について通知したと説明。選任義務は市町村教委にあるとし、「法令違反」状態の解消を求める。それに対し、市町村教委からは県に「旗振り役」を期待する声も。南部地域の担当者は、匿名を条件に本音を漏らした。「どの市町村も産業医の確保に苦労している。教員は県職員。県の教育長が医師会トップに要請するくらいは、すぐにできる。県と市町村が責任をなすりつけ合っていては悪循環だ」
 (眞崎裕史)