「女なのに」…厳しい目あっても 沖縄女性初の空手範士九段が誕生 75歳の大城信子さん「伝統の型を忠実に伝えたい」


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 沖縄空手道小林流大信館協会会長の大城信子さん(75)がこのほど、県内で女性初の範士九段に昇段した。30年前に県内初の女性道場主になるなど、沖縄で女性空手家の道を切り開いてきた草分け的存在だ。「女なのに」と厳しい目を向けられたこともあるが、前向きな気持ちと努力が認められ、県空手道連合会から範士九段を授与された。「伝統空手の指導に一層努めたい」と前を見据える。

 大城さんが空手を始めたのは28歳。打ち込んでいた琉球舞踊に生かそうと、比嘉佑直氏の道場の門下生になった。

 当時、女性空手家はほとんどおらず「イナグ(女)なのに強くなりたいのか」と言われることもあり、悔しい思いをしたという。

 風当たりは強かったが、持ち前の負けん気を発揮して練習に打ち込んだ。師匠の比嘉氏は大城さんの努力を評価し、厳しく稽古を付けた。練習は深夜1時まで及ぶこともあった。

 大城さんは「人前で泣いたことはないが、悔しくて隠れて泣いたことはある。でも、小さな所作一つを改善するだけでさらに強くなる空手の面白さに夢中になった」と話す。男性の先輩からはいつしか「頑張れよ」と声がかかるようになった。

 1993年に浦添市に道場を構え、女性初の館長として後進の指導に力を入れてきた。今年1月初旬に、県内で女性初の範士九段に昇段した。「師匠の教えである『継続は力なり 武は礼節なり』を肝に銘じ、沖縄の伝統の型を次世代に忠実に伝えたい。まだまだ道のりは厳しいが、女性の道場主を増やすことが私の夢。指導に一層力を入れたい」と瞳を輝かせた。
 (赤嶺玲子)

門下生の見本として空手の型を演武する大城信子さん=2022年、浦添市伊祖の大信館本部道場
範士九段を授与された大城信子さん(中央)ら=30日、那覇市の琉球新報社