【識者談話】拡大ない経済どう回す? 沖縄人口初の「自然減」 山内昌和・早稲田大教授(地理学)


社会
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山内 昌和氏(早稲田大教授)

 終戦後、米施政権下にあった沖縄では、本土のような急激な出生率低下は進まなかった。また、復帰後も本土とは異なる家族観が根強く、出生率は比較的高いまま推移した。これらのことは、本土に比べて高齢化を遅らせる一因となっている。

 とはいえ沖縄でも高齢化が進んでいる。高齢化が進むと自然減は起こりやすい。実際、先進国や本土では自然減の地域は珍しくない。新型コロナウイルスの影響で幾分早まった感もあるが、沖縄が自然減になるのは時間の問題であったし、今後も続いていくだろう。

 将来的には沖縄でも人口は減少していくとみられるが、悲観的に捉えない方が良い。現代は、一昔前よりも長寿になった。結婚するのか、子どもを持つのか、何人の子どもを持つのかについても、人々の意思がそれなりに尊重されるようになった。

 人口が増加する時代は、資源配分をめぐって競い合う「競争社会」の側面もあった。反対に人口が減少するこれからの時代は、1人当たりの利用可能な資源量が増えるので、競争の必然性が減り、相対的に少ない人数でどのように資源を利活用するのかが問われていく。

 もちろん行政は、当面増える高齢化予算や人口減に伴う地方交付税交付金の減少といった事態に直面する。ただし、人口の高齢化や減少は本土の方が進んでおり、沖縄の自治体には本土の事例を参考にする時間的余裕がある。

 今の経済の仕組みは拡大再生産を前提にしている。経済のために人口を増やすのではなく、拡大しない社会でどうやって経済を回し、一人一人が幸福に生きられる仕組みを作っていくのかが、これからは大切になるだろう。
 (地理学)