written by 佐野真慈(宮古支局)
支局を出ると目が合う。大柄でむすっとしている。私にちろりと目をやり、メンチを切ってくる。時には社用車のボンネットの上に陣取り、まだ温かいエンジンを湯たんぽ代わりにくつろぐ。堂々たるボス猫ぶりに思わず苦笑する。
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キジトラ柄の彼が現れるようになって半年ほどになろうか。えさをやるわけでもないのに朝、昼と一日に二度、決まって訪れる。支局駐車場を縄張りパトロールの休憩場所にしていただいたようだ。
そんなボスは耳の先端が一カ所、V字型にカットされた「さくら猫」。TNR事業による不妊去勢済みの地域猫の証しだ。同事業は動物保護団体などボランティアが支えている。「命を守りたい」。その一念が原動力だ。
宮古島では2019年度以降、猫の殺処分ゼロが続いている。一方、収容数は変わらない。毎年、数十匹が収容されるが、愛護団体や保健所が譲渡先を探して殺処分を防いでいる。
県などによると21年度には、県内で約1300匹の犬猫が収容され、うち200匹超が殺処分された。玉城デニー知事は殺処分ゼロを公約に掲げるが道半ばだ。犬猫の遺棄は動物愛護管理法違反に当たる。命を守り育てる覚悟がない人間に彼らの愛くるしさに癒やされる資格はない。「一生うちの子」を忘れないでほしい。
(宮古島市、多良間村担当)
ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。