組踊に新たな地平を切り開く 「鶴亀の縁」上演 鈴木耕太作 第2回新作組踊戯曲大賞作品


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「鶴亀節」を踊る亀千代(前・宮城茂雄)と崎山親雲上(宇座仁一)=1月28日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわの企画公演・新作組踊「鶴亀の縁~扇のえにし~」(鈴木耕太作、金城真次演出・振り付け)が1月28日、浦添市の同劇場であった。鶴亀の縁は第2回新作組踊戯曲大賞の大賞受賞作。組踊では初と思われる薩摩の場面が登場するほか、鹿児島県の伝統芸能に使われる歌を用いるなど、創作の可能性を広げる試みが盛り込まれた。作者の意図と合致した演出と共に、組踊の新たな地平を切り開いた。  薩摩勤めを終え、琉球への帰路についた崎山親雲上(宇座仁一)は、船の事故で命を落とす。10年後、崎山の子・亀千代(宮城茂雄)は、父の友人・立津親雲上(上原崇弘)の助力を得て、学問や芸能を修め、江戸上りの踊り役の試験に挑む。試験に受かった亀千代は、薩摩守(玉城匠)の前で踊りを披露し、かつて薩摩守が父に与えようとした、鶴亀の柄の扇子を褒美として頂戴する。  父と、父を追うように母を亡くした亀千代の登場では「散山節」、亀千代一行が薩摩に向かう際は「上り口説」を用いるなど、場面に応じた古典音楽が舞台を彩った。薩摩到着後の道行きでは、琉球の使節団の踊りをまねて江戸時代に作ったという、鹿児島県指宿市山川利永(としなが)の伝統芸能「利永琉球傘踊り」の歌を用いた。「傘踊りの歌」より、桜島の雄大さをたたえ、琉球に思いをはせる終盤部分が歌われ、往事の役人の心境を観客に想起させた。

薩摩守(右・玉城匠)より、扇子を賜る亀千代

 七五調で書かれた薩摩守らのせりふは、おおよそ12音を一区切りとし、9もしくは10音目の言葉の音高を大きく上げ、残りを下げるイントネーションで演じられた。歌舞伎で聞かれるようなせりふの音の変化が終盤にあることで、組踊のテンポは崩さず、和の雰囲気をしっかり感じさせた。

 薩摩守から賜った扇子を手に亀千代が「鶴亀節」を踊る最後の場面は、崎山も紅型幕の後ろで共に踊った。紅型幕の鶴亀が、互いを思い踊る親子を見つめるように配されるなど、演出の妙が光った。

 宮城ら立方の好演をはじめ、「散山節」や「傘踊りの歌」など、地謡の歌も秀逸だった。立方の上原も舞台上で歌三線を披露し、十分に勤めを果たした。一方で、初めて耳にする一つ一つのせりふを「聴き」たいという、新作ならではの期待の高さもあり、見巧者からは一部、唱えの声量不足を指摘する声も聞かれた。

 ほか立方は石川直也、川満香多、下地心一郎、髙井賢太郎ら。歌三線は仲村逸夫、玉城和樹、大城貴幸、徳田泰樹。箏は新垣和代子、笛は横目大哉、胡弓は平良大、太鼓は宮里和希。
 (藤村謙吾)