昨年2月に脳梗塞で倒れ、リハビリを経て再び筆が持てるようになったイラストレーターのおしりんさん(35)=那覇市=が初個展を開く。「以前は絵を描く自分が当たり前だったが今はうれしくて仕方がない。動いてくれている指を、人を幸せにすることに使っていきたい」と語る。個展は那覇市首里赤田町のアートスペース「アクト」で10~12日。入場無料。
34歳の誕生日を迎える2日前、頭痛で休むおしりんさんの異変を家族が感じ、救急車を呼んだ。そのまま入院となった。告げられた病名は「脳梗塞」。左半身は動かず、そのまま安全のためにとベルトでベッドに拘束された。
「尊厳を奪われたような、毎日が死にたい気持ちでいっぱいだった」。後遺症で感情のコントロールが効かず、記憶力も低下する「高次脳機能障害」の症状も現れた。コロナ禍で面会謝絶となり、1歳の息子にも満足に会えなかった。動く右手で書けたのは、ゆがんだ線だった。
約半年の入院生活を経て退院した。記憶力の低下は今も残るが、少しずつ絵が描けるようになった。「描けることがこんなにうれしいと思う日が来るなんて」と笑顔を見せる。
病を経て大きく変わったのは価値観という。「教育・福祉などは私と関係のない世界だと勝手に感じていたが、入院中は感謝しきれないほどの支えを受けた」と振り返る。自身も「誰かの支えになりたい」と、現在教育関係の職に就く。「絵でも協力できたらいいな」と思いを込める。
個展では作品を販売し、収益の一部は闘病を支えてくれた教育福祉機関などに寄付する。
(新垣若菜)