性暴力、母の内縁夫から2度 被害女性は実家と絶縁、家に引きこもり…支援受け告訴「声あげていく」


社会
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事件を振り返り「性暴力は絶対に許せない」と話した被害女性=県内

 「性暴力は絶対に許せない。私が話すことで、少しでも同じような境遇にいる人に声を上げる勇気を出してほしい」。2020年10月に母親の内縁の夫である男性から性暴力を受けた30代の女性=本島在住=が10日までに本紙の取材に答え、性暴力根絶を願い、思いを語った。

 事件は読谷村にある女性の実家で起きた。夫は出張中で、女性は実家に子ども2人を預けて出掛けた。夜、女性が実家に帰ると母親は外出しており、シングルマザーの母親と20年以上交際している50代の男性が寝室で子どもたちと寝ていた。女性は男性にリビングへ移動してもらい、子どもの隣で眠りについた。

 違和感があり目が覚めると、男性は女性の下着の中に手を入れていた。「まさか」「なんで」。パニックになり恐怖心で身動きが取れない中、状況を把握しようと必死に考えた。「起きているのに気付かれたら殴られるかもしれない。子どもたちがこの場面を見てしまうかもしれない」

 さりげなく寝返りを打ち体を背けて拒否しようとしたが、すぐに引き戻され、行為はエスカレートしていった。男性は女性の手を引っ張り、自分の性器を触らせた。耐えられなくなり声を出そうとした瞬間、母親が帰ってくる物音がした。男性は急いで自分と女性の服を整えて寝室を出て行った。

 女性は日が昇るとすぐに、子どもと家を出た。

 2020年10月に母親の内縁の夫である男性から性暴力を受けた30代の女性は、男性とは長年家族同然の付き合いをしてきた。だが女性は中学1年の時にも男性から性暴力を受けていた。当時は家族の仲が壊れるのが怖く、母親と妹に被害を打ち明けられるようになるまでに数年かかった。しかし、今回再び被害に遭い「絶対に許せない」と怒りが湧いた。

 事件の3日後に母親に被害を告白し、男性と別れるよう訴えた。母親が男性と縁を切るのであれば、事件は家族間で解決しようと思っていた。

 被害を聞き、母親はショックを受けた様子で女性に謝った。だがその後も男性と別れる様子がなく、次第に「私も被害者だ」「(女性が)誘惑したんだろう」と責めるようになった。当初相談に乗ってくれていた妹も母親と男性に同調するようになった。事件から約2カ月後、家族関係の修復が見込めないことから、女性は夫に被害を告白し、家族と絶縁した。

 被害の傷は残り続けた。女性の自宅は実家近くにあったため、男性と鉢合わせするのが怖くなり、家に引きこもりがちになった。夫と子どもとともに読谷村から引っ越したが、その後も不眠や食欲低下といった症状に悩まされ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。

 だがどんなにつらくても、「泣き寝入りで終わらせない」という思いは持ち続けていた。夫や県性暴力被害者ワンストップ支援センターなどの支援を受け、事件から約3カ月後に警察に被害届を提出し、裁判を起こした。

 男性は準強制わいせつ罪に問われ、懲役2年、執行猶予5年の判決がついた。女性は「短期間でも刑務所に入って罪の重さを感じてほしかった」と悔しさをにじませる。

 性暴力は被害者が声を上げられないまま、長年被害を抱え込まざるを得ないケースも多い。女性は「性犯罪者を野放しにしてはいけない。次の被害者を出さないためにも、『このままで終わらせない』と声を上げていきたい」と話した。
 (嶋岡すみれ)