コロナで消えた目標…ふさぎ込んだ転校後「ワンチャン上位狙えるかも?」支えになった重量挙げと仲間たち


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重量挙げでも写真でも活躍した高校3年間を振り返る岸良愛天音さん=13日、嘉手納高校

 新型コロナウイルスの感染者が県内で初めて確認されてから14日で3年となった。スポーツに情熱を傾けてきた生徒たちは、目標としていた夢舞台を感染対策という理由で失い涙をのんだ。流行が小康状態となり日常を取り戻す中で夢を描き直す人がいる。

 中学校の卒業式ができず、高校の入学式はオンライン、入学直後から一斉休校―。現在の高校3年生は波乱の中で高校生活をスタートさせた。嘉手納高校3年の岸良愛天音(あてね)さん(18)も、どん底を味わった。

 中3まで柔道一筋。強豪・沖縄尚学高校に入学し、高校総体での活躍を夢見ていた。ところが、目標の総体がコロナで消失した。「何もかもやりたくない」と感じ、ふさぎ込んだ。1年の途中で沖尚を辞め、地元の嘉手納高校に転校した。

 嘉手納で待っていたのは重量挙げの平良真理監督(現女子日本代表監督)だった。熱心な勧誘を受けたが「何もしたくない」と断った。「その時は自分が一番かわいそうだと勘違いしていた」

 何度も声を掛けられ、半ば強引に大会に出場させられた。結果は出なかったが「ワンチャン(もしかしたら)、上位狙えるのでは?」と手応えを感じた。断り続けた気まずさから、平良監督に「やってもいいよ」と、ぶっきらぼうに回答した。

 学校に通えず、同年代がいそうなスーパーやコンビニも入れない。苦しい時期を乗り越え、重量挙げに出合った。地元の高校には中学時代の仲間がいて、心の支えになった。「中学時代はあまり話さなかった人も相談に乗ってくれた。『愛天音だったら大丈夫』と言ってくれた」。気付けば大切な仲間に囲まれ、競技力も向上していた。

 重量挙げで九州大会出場が決まり、スイッチが入った。目標は「みんなで優勝」。学校での日々が再び輝き出し、九州大会は団体優勝を勝ち取った。高校最後の全国総体も個人4位になり、胸を張れる成績を残した。

 高校生活は重量挙げだけではなかった。写真部にも入り、写真甲子園で優秀賞を獲得した。何気ない日々を撮り続けた作品を改めて見ると、仲間の笑顔が並んでいた。「大人が思っているほどかわいそうじゃない。大変だけど、楽しんでもいたんだと実感した」。3年間には涙も笑顔も詰まっていた。
 (稲福政俊)