愛と友情の曲、表情多彩に 下里豪志ピアノリサイタル「とりこになった」曲も披露 那覇


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エンリケ・グラナドスが作曲した、ピアノ独奏のための組曲「ゴイェスカス」より「愛の言葉」などを演奏する下里豪志=10日、那覇市のパレット市民劇場

 南風原町出身でイタリア在住のピアニスト、下里豪志のリサイタルが10日、那覇市のパレット市民劇場で開催された。今回は、作曲家自身が友人の曲や作品からインスピレーションを受け書かれた曲から、前半は愛をテーマに、後半は友情が生み出した名作を選んだ。下里は、イタリアで研さんを積み腕を磨いてきた表情豊かな多彩な演奏、解説やトークでも観客を魅了した。

 2017年から日本トランスオーシャン航空の協力の下、本島や離島でリサイタルのほか公開レッスンなど県内で幅広く活動。会場には満席となる多くの観客が駆けつけ、約3年ぶりのリサイタルとなった下里の演奏に聴き入った。

 幕開けはブゾーニ作曲のソナチネ第6番「カルメン」で飾った。続いて、スペインの作曲家エンリケ・グラナドスが作曲した、ピアノ独奏のための組曲「ゴイェスカス」より「愛の言葉」と「嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす」を披露。鍵盤に感情を乗せて、踊るように生き生きとした音色を響かせた。

 下里は「私自身もたくさん助けられた作品。この曲に触れて久しぶりに音楽の面白さや美しさ、いろんなことを思い浮かべるきっかけになり、音楽の世界のとりこになった」と振り返った。前半の最後にリストの名作「ラ・カンパネラ」を奏で後半につないだ。

 最後の演目はムソルグスキーの「展覧会の絵」。ロシアの画家で友人のハルトマンの死後、開かれた展覧会に出かけたムソルグスキーが10枚の絵の印象を音楽に仕立てたピアノ組曲。想像力をかき立てるように、迫力あふれる演奏で作品の世界観に引き込み拍手喝采を浴びた。

 アンコールにショパンの「ノクターン“遺作”」を奏でた下里は、会場を見渡し「胸がいっぱい」と感謝を述べた。コロナ禍になり初めて感じたというピアノとの葛藤を振り返り、今年3月から拠点をフランス・パリに移すことを発表。「また一から頑張りたい」と抱負を語り、最後に「てぃんさぐぬ花」を演奏して締めくくった。

 主催は同実行委員会、特別協力は全日本ピアノ指導者協会沖縄支部、特別協賛は日本トランスオーシャン航空。
 (田中芳)