「水道水やめたのに」血中PFAS、米の目安超に不安 市民が検査報告会 沖縄・金武、北谷


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
血液検査の結果報告を聞く受検者ら=17日午後、金武町の金武公会堂

 【金武・北谷】「これから一体どうすればいいのか」「子や孫は大丈夫なのか」―。人体に有害とされる有機フッ素化合物(PFAS)が米軍基地周辺で高い値で検出されていることに関し、調査受検者や同じ水道水を使用している住民らからは対策指針や、全県的な疫学調査を求める声などが上がった。

水道水やめたのに 金武

 市民団体「有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会」が独自実施した血中濃度検査の報告会が17日、金武町の金武公会堂で開かれた。

 米国の学術団体が示した健康対策を要する目安値を超えた血中濃度だった受検者の一部には、甲状腺の病気や腎機能の異常を示す診断を過去に受けた人もいた。因果関係は不明。

 町内の受検者で2番目に悪い検査結果だったという金武区の安富信武さん(73)は「1年半前にこの問題が明るみに出てから水道水の使用をやめて市販の水を買うなど対策していたのに」と声を落とした。「全県的な検査はもちろん必要だが、私たちのように悪い結果を受けてしまった県民が、今後どのようなことに気をつけたらいいのか、具体的な指針がほしい」と国や県に早期の対策を訴えた。

 金武区の水道水を長年使用し、目安を超える検査結果だった女性(84)は「体調不良の原因は『もしかして』と考えてしまう。孫はまだ小学生。これからの子どもたちの健康はどうなるのか」と不安そうな表情を浮かべた。

 検査結果を報告した連絡会の共同代表で、沖縄大学名誉教授の桜井国俊氏は「県民が声を上げ、議会や首長、県、国を動かして疫学調査や今後の対策などを実施させることが重要だ」と指摘した。

 米国の科学、工学、医学の3アカデミーは、PFASのうちPFOS、PFOA、PFHxs、PFNAの4種の合算が血液1ミリリットル当たり20ナノグラムを超えた場合は健康リスクが高いとし、医師が患者に暴露低減を助言する必要があるとしている。
 (松堂秀樹)

子への影響危惧 北谷

 北谷町では受検者の66・1%(59人中39人)が目安値を超えた。18歳未満は今回の対象ではなかったため、「この先も北谷で暮らす子どもが心配だ」と検査を求める声もある。

 「普段から飲料水は市販のものを使っているが、料理には水道水を使っている」と話すのは、今回の検査で目安値を上回った北前区自治会の徳田伝会長(68)。「北谷浄水場の水は本当に安全なのか。国の定めた暫定目標値は安全なのか」と心配そうに話した。

 昨年9月の町議選で、PFAS汚染の問題解決に取り組むことを公約に掲げ初当選した仲宗根由美町議(36)は3人の子どもを育てている。受検の結果、値は低かったが「子どもたちを妊娠していたときに、何かしらの影響があったのではないか」と懸念した。

 市民団体の共同代表を務める玉那覇淑子町議(73)は「受検者の半分以上が目安値を超えたことに受検していない人の間では不安を抱いている人もいるだろう」とした上で「国や県は町民全体を対象とした健康調査と米軍基地の立ち入り調査を実施しなければならない」と述べた。
 (名嘉一心)