金原亭杏寿「二つ目」昇進、浅草で初高座「一番うれしい」 真打ちへ精進決意


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二つ目に昇進し初の高座に上がった金原亭杏寿=11日、浅草演芸ホール

 【東京】前座見習い、前座を経て落語家として独り立ちに向け歩む「二つ目」へ金原亭杏寿が昇進し11日、浅草演芸ホールで初の高座に上がった。噺(ばなし)家として本編「孝行糖」に入る前の「枕(まくら)」ではこう切り出した。「何より前座修業が終わった喜びが代えがたい」。やっと落語家への起点に立ち、真打ちに向けさらに精進する決意を込めた。

 県内からの落語家で二つ目に昇進したのは女性では初となる。杏寿にとってコロナ禍も重なり二つ目昇進はいばらの道。寄席が休みとなるなど修業を重ねる機会が減り、3~4年とされる二つ目昇進まで5年3カ月の歳月を要した。

 枕ではこうも語った。真打ちになった先輩たちが振り返って「二つ目になった時が一番うれしかった」との話を引き合いに「今日から始まる私の落語家人生。一番うれしいピークがきょうでございます」。落差のある巧みな話の流れで序盤から快調に飛ばし聴衆を沸かせた。

 師匠の金原亭世之介は音楽などにも造詣が深く、落語ミュージカルの開催など芸の幅の広さを持ち味とする。「聞き手は落語を心で感じている。愛嬌(あいきょう)があったほうがいいが、半面でこれから陰での稽古がどれだけ必要か」と述べ、芸の幅の広さも真打ちへの道に向けて大切なことを説く。

 初高座の後に杏寿は「自分の言葉で枕を話すのは初めてだったので緊張した。ひと高座の責任もある」と表情を引き締めた。

 二つ目になり、杏寿は真打ちに向けて抱負を語る。「余芸がないと落語も良くならないとの師匠の言葉通り、いろんな分野に挑戦して最終的には落語につなげて実りある二つ目期間にしたい」

 固有の芸能を伝統的に育んできた沖縄。真打ちへの道を歩みつつ当面の目標に据えるのは「世之介一門の会」。「真打ちがいて、前座がいて落語が人によって、こんなに違うんだというのを沖縄でもみていだたければ」。そして「沖縄の唄三線はしっかり勉強して、真打ちの初日に向けて芸を磨きたい」と将来像を描いた。

 二つ目昇進お披露目は来月まで続き、3月31日には初の独演会が浅草「東洋館」である。
 (斎藤学)