病気や障がいある子の「きょうだい児」支え10年 活動のきっかけとなった次女の心の叫び 「がじゅまるの家」 沖縄・南風原


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「がじゅまるの家」統括主任の真栄城正美さん(中央)と、運営する「わらびの会」の窪田寿子さん(右)、仲松妙子さん=1月、南風原町新川のがじゅまるの家

 県立南部医療センター・こども医療センターなどで治療・入院する子どもとその家族が滞在する施設「ファミリーハウス がじゅまるの家」(南風原町)で、病気や障がいがある子の兄弟姉妹を指す「きょうだい児」の支援が始まって10年がたった。

 がじゅまるの家を利用する家族の多くは、県外や離島、北部など遠方から治療を受けに来る。親が長期の治療が必要な病児に付きっきりになる間、きょうだい児は一人で親戚の家に預けられるなど、家族と離ればなれで過ごしている場合も少なくない。

 そこでがじゅまるの家では、親子の不安と精神的疲労の軽減のため、親が病児の治療や面会、病状説明などでがじゅまるの家を離れる間、無償できょうだい児の預かり保育をしている。親ががじゅまるの家に戻ると、きょうだい児と一緒にご飯を食べたり眠ったりできるよう居場所を整え、家族を支えてきた。

 統括主任の真栄城正美さんは「病児には親や医師、看護師など多職種で大勢の目が届くが、きょうだい児にはなかなか目が向けられない現状がある。きょうだい児も社会全体で支援が必要な子たちだ」と語る。

 支援のきっかけは、真栄城さん自身が重複障害のある長女と、きょうだい児である次女を育てる中で、きょうだい児の苦しみや寂しさに気付き、支えが必要だと感じたことだった。

 真栄城さんが「今でも忘れられない」と語るエピソードがある。当時小学4年生だった次女と、ささいなことでけんかをした時、次女は「お父さんお母さんはいつもお姉ちゃんばかりで、私が何を考えているのか分からないでしょ」と心の叫びをぶつけた。

 とてもショックだった。親としては平等に関わっているつもりだったが、振り返ってみると次女を親戚に預け、長女にかかりきりだった毎日の積み重ねの結果だと感じた。次女のように、病児の陰に隠れて、一人で寂しさを抱え込んでいる子がたくさんいるのではないか―。支援が必要だと気付いた。

 がじゅまるの家を運営する認定NPO法人「こども医療支援わらびの会」は2012年、きょうだい児を預かるための資金をクラウドファンディングで募り始めた。

 当初は登録保育士が、がじゅまるの家できょうだい児を預かっていた。21年からは南風原町の協力を得てファミリーサポートが利用できるようになり、保育士が足りない時でも対応できるようになった。預かりにかかる利用料金は全てわらびの会が負担している。

 真栄城さんは「きょうだい児を病院、わらびの会、地域で支えていきたい」と語る。わらびの会では病児やその家族を支援する病院ボランティアの養成などもしている。

 ゆくゆくは夜間や休日にボランティアが病児に付き添い、親が一時的に家に帰ってきょうだい児と過ごしたり、保育園や学校の行事に参加したりできるよう手助けもしたいと希望を膨らませる。「きょうだい児の支援が必要だと、もっと広く社会に知ってもらうことが大切だ。支援に向けて、社会全体で仕組み作りができればいいなと思う」と展望を描いた。
 (嶋岡すみれ)