おきなわこども未来ランチサポート 寄り添い あたたかく


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 子どもの学びや育ちを応援しようと、県内各地に児童生徒の集う居場所がある。一緒に食事を楽しんだり、遊んだり、学習をしたりと形態はさまざま。おきなわこども未来ランチサポートからの食材は憩いの場に欠かせない。食を通した交流は学びの源泉になっている。各地の居場所を訪ねた。

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無料学習塾エンカレッジ 軽食が学ぶエネルギーに

 調理場のカレーライスの香りが広がり、教室にいた子どもたちが勉強の手を止めて鍋の周りに集まってくる。読谷村波平の無料学習塾エンカレッジ読谷第2教室は、学習塾から「食堂」へと変わる時間がある。さまざまな年齢の子が同じ食事を囲む風景は、大家族のようだ。

 同校には小学校から高校生まで、さまざまな学年の50人程度が通う。それぞれが自分に合った課題を選び、黙々と鉛筆を走らせる。講師は個別にアドバイスを出し、学びを支えている。

中学生に勉強を教えるエンカレッジ読谷第2教室の講師=7日、読谷村波平

 「ここに来る子どもたちの第一声は『おなか空いた。なんかない?』です」。エンカレッジ中北部エリア担当の安次嶺北さん(48)は、優しい笑顔を見せながら子どもたちの様子を説明する。「小学校の高学年や中学生は学校から直接、こちらに来る。空腹で勉強すると身が入らないでしょう」。ささやかな軽食が学びのエネルギーとなっている。

 エンカレッジは県内30カ所で無料塾や子どもの居場所を展開する。読谷第2教室のように、町村部の教室は県の事業を受託して運営するが、食費は出ない。子どもが楽しみにしている軽食は、ランチサポートや地域の社会福祉協議会などの協力がなければ成り立たない。米や調味料、スイートコーンの缶詰など室内に並ぶ食品は、どれも善意が形になったものだ。

 利用者アンケートでは「塾に通うようになって、家でも机に向かう時間が増えた」と、学ぶ意欲が向上したとの声のほか「友達が増えた」「ご飯がおいしい」などの声も出てくるという。安次嶺さんは「いろんな人に支えられて勉強ができている」と支援に感謝した。

 


宮古島こどもこそだてワクワク未来会議 食の支援でつながり創出

 宮古島市平良の「宮古島こどもこそだてワクワク未来会議」の事務所にはカップ麺や菓子類、缶詰などが所狭しと並ぶ。代表の寺町北斗さん(39)は「困窮世帯それぞれの状況に合わせて仕分けして配っている」と語る。

支援物資を仕分けする「宮古島こどもこそだてワクワク未来会議」の(左から)寺町北斗代表とスタッフの大見謝美香さん、小林美穂さん=14日、宮古島市平良

 同会議は「すべての子どもに居場所を」を合言葉に食支援やDV・虐待被害支援、相談対応、体験イベント開催などを通じて困窮世帯の支援活動に取り組む。2019年夏に市内で開催された不登校相談会への参加をきっかけに、20年3月に任意団体を立ち上げ、子どもの居場所づくり事業を始め、同年10月に法人化した。寺町さんは「足りないものは創るを基本に、それぞれの家庭の困りごとの相談に応じながら、信頼できる機関やメニューにつないでいる」と話す。

 食支援は困窮世帯に週に一度、直接、食材を配達する。21年度には約2600人に約5万点を配布した。22年度は約3割増だという。

 配布食材に肉や魚など生鮮食品は含まれていない。「寄付の話もあるが断っている」。冷蔵・冷凍設備がなく現状では対応できない。「困窮世帯の子どもたちは普段から肉や魚などタンパク質が足りていないことが多い。なんとかフォローしたいけどハードの面で難しい」と声を落とす。

 コミュニティーの小さい離島ならではのジレンマも抱える。「困窮の深刻さを周知することで島や地域のイメージダウンになるといやがる人もいる」と明かす。それでも、畑で採れた野菜を持ってきてくれる人や年間を通して定期的に食材を寄贈する企業など、少しずつ支援の輪は広がっている。「人と人のつながりを生んで、互いに大丈夫?と声を掛け合える地域づくりを目指していきたい」と話した。

 


みんなおいでよ 陽迎橋 気軽に 安心できる居場所

 「アイス食べる人いる~」。冷蔵庫からアイスキャンディーを取り出し、友達同士で分け合う児童のそばで、別の児童が大学生のお兄さんに宿題を教えてもらっている。「いつも見守りありがとうございます」と訪ねてきたのは、子どもを迎えに来たお母さん。浦添市西原の子どもの居場所「みんなおいでよ陽迎橋」は、幅広い年代が家族のように交流する。誰もが気軽に訪れ、「安心」を得て家路に就く。

ランチサポートの食材を使ったカレーを取り分ける児童と、見守る金城登喜子さん(左)=8日、浦添市西原の「みんなおいでよ陽迎橋」

 居場所の始まりは子どもの貧困対策だった。しかし、「貧困」という言葉はあまりにきつく、子どもが来づらいのではないかと悩んだ。誰でも気兼ねなく訪れる場所にしたいと願い「みんなおいでよ」と名前を付けた。

 事務局の金城登喜子さん(66)は「来るだけでほっとする場所にしたい」と語る。多くの子が訪ねる中で、もし困難を抱えている子がいれば話を聴く。「聞き出すのではなく、待って聴く。話してくれるタイミングはやってくる」

 自治会メンバーだけではなく、大学生も運営を支える。講義の一環でボランティアをしていた学生が、活動に意義を見いだし、その後も継続して手伝うことも。琉球大4年の砂川泰志さん(29)は「子どもと遊んだり、高校生の受験をサポートしたり、やりがいがある」と意欲を見せる。

 ランチサポートの食材は憩いの場に欠かせない存在だ。もらったスイカを割ってみると、予想外に黄色い果肉が現れ、みんなで盛り上がったこともあった。金城さんは「子どもの支援に終わりはない。いろんな人に支えられ、つながりを持ちながら地域の子を見守っていきたい」と語った。

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