【深掘り】首里城の龍頭棟飾 県内職人による復元求める背景とは 県は混成チーム検討


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首里城復興基金事業監修会議焼物ワーキンググループの会合に駆け付け、担当者の説明を聞く島袋常秀理事長(左から2人目)=1日、本島南部

 火災で焼失した首里城正殿の龍頭棟飾(りゅうとうむなかざり)の復元について、壺屋陶器事業協同組合(島袋常秀理事長)が沖縄側が主体的に関われる体制の構築を求め、緊急集会や県、県議会への要請などを続けている。前回「平成の復元」は県外の技術者が制作しており、今回も同じ技術者が候補に挙がっている。壺屋の陶工や県内の研究者は「技術継承、後継者育成のためにも沖縄が主体的に関わるべきだ」と主張する。

 島袋理事長らは1日、専門家でつくる県の「首里城復興基金事業監修会議」の焼物ワーキンググループ(WG)会合に駆け付けた。開会前、委員らに「壺屋が主体的に関われるよう再考してほしい」と訴えた。

 組合は大小さまざまな工房や陶工らで構成。組織だって要請などをすることは珍しく、単に県内優先発注を求めているのではない。

 王国時代の首里城には琉球の職人が手掛けた焼物が使われてきた経緯や、戦後の陶業復興の地・壺屋に代表される県内の職人らが復元に関わることの大切さを訴えたいとの思いが異例の行動の背景にある。

 同組合は2021年に県議会に陳情するなど「壺屋が復元の中心となり、後継者育成にも関わることのできる体制」の確立を求めてきた。棟飾を正殿に載せるには焼物の技術だけでなく、建築技術も必要とされるが、前回担当した技術者から助言を得て取り組みたい考えだ。

 平成の復元と違い、今回は県内外から復興のために寄せられた基金が活用されることもあり、関係者からは「沖縄が主体となるべきだ」との意見が根強い。

 玉城デニー知事は21年9月の県議会で「県内に蓄積、継承されている伝統技術を積極的に活用する」「壺屋陶器事業協同組合を含む県内技術者による制作に向け、国と連携し検討したい」などと答弁した。

 ただ県は前回の技術者に、壺屋の若手技術者数人が加わる体制を検討している。県首里城復興課の担当者は「チームで取り組むという考えだ。壺屋の事業者と協力する形を考えている」と述べる。

 監修会議の焼物WGの委員でもある西村貞雄琉球大名誉教授は「復元後のメンテナンスを考えれば、地元が技術を身に付ける必要がある。前回の経験者の技術は必要だが県内の技術者も研究を重ねており、状況が変わっている。互いにできることをすり合わせるのがベターだ」と述べた。

(宮城隆尋)