【深掘り】石垣の陸自ミサイル部隊の車両搬入 市長が要請した市民説明会もないまま…防衛相の「丁寧な対応」とは 知事姿勢はどう変化


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陸上自衛隊石垣駐屯地に向けて公道を走行する自衛隊車両に抗議する市民=5日、石垣市

 防衛省・自衛隊は5日、石垣市で整備を進めてきた陸上自衛隊石垣駐屯地へ地対艦誘導弾の関連車両を含む約150台の車両を搬入した。濃い緑色に塗装された陸自車両が市街地を車列をつくって走行し、今まで基地がなかった島はものものしい雰囲気に包まれた。南西諸島の部隊配備の「空白地帯」を埋めるためとして、政府が与那国島や宮古島、奄美大島で進めて来た一連の駐屯地新設事業は大きな節目を迎える。石垣島では16日の開設に向け最終段階に入った。

 5日朝、石垣港付近の道路では車両の搬出を始めようとする自衛官と、詰め掛けた反対派市民の間でにらみあいが起きた。自衛隊は2月末から車両を段階的に陸揚げし、石垣港近くに借りた土地で一時保管し、この日の駐屯地に向けた車両搬出を準備。防衛省と共に市民の抗議行動を予想し、県警との調整を重ねてきた。

■周到に

 迎えた当日朝。約50人が車両の通行を阻止しようとしたが、県警の機動隊がその都度強制的に排除して自衛隊車両を通し準備の周到さを見せた。
 
 石垣市の中山義隆市長は自衛隊配備や今後の強化に協力的な姿勢を示す一方、市民の間には反対の声や詳しい説明を求める意見も根強くある。

 中山市長も2月17日、市役所で面談した沖縄防衛局幹部に市民説明会の開催を要望したが、まだ行われていない。

 浜田靖一防衛相は今月3日の記者会見で「引き続き丁寧な対応に努める」と強調したが、車両搬入に当たっては日時や経路を事前に公表していなかった。弾薬搬入の日時や経路も明確にしない方針だ。防衛省関係者は「全員が納得する説明はあるのか。反対する人は何を言っても反対するのではないか」とこぼした。

■姿勢に変化

 玉城デニー知事はこれまで、自衛隊の果たす役割に理解を示し、県内で急速に進む自衛隊の配備についても「地元の理解と協力」を得るようにとどめるなど、明確に反対する姿勢は示してこなかった。

 だが、政府が昨年12月に閣議決定した安全保障関連3文書で、相手の基地などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を打ち出すと、玉城知事は県内配備には反対する姿勢を明確に示すなど、防衛力強化への懸念を強めている。

 与党県議の一人は「玉城知事は専守防衛を旨とした憲法の範囲内で自衛隊を認めてきた」と指摘。3文書に盛り込まれた南西諸島の防衛力強化で沖縄の負担が高まる懸念が強まったほか、敵基地攻撃能力が憲法に反するとの見方が「姿勢をシフトさせている要因ではないか」と指摘する。

 一方、一度配備されればミサイルの配備強化や共同訓練で米軍も入るなど「好き勝手に使用されかねない」との声もあり、県に対してはさらに強い姿勢を求めている。

 (知念征尚、明真南斗)