prime

【識者談話】雇用調整弁や家計補助に「女性」…問われる社会の性差 成定洋子氏(沖縄大学教授)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
成定 洋子氏(沖縄大教授)

 県内の会計年度任用職員の8割近くを女性が占めることは、女性を雇用調整弁や家計補助的役割として「活用」してきた市場や職場、社会や家庭における性別役割分業/意識などのジェンダー関係と無関係ではないと思われる。家事や育児などを他者の手に委ね、残業や休日出勤にいそしむような男性正社員の働き方を労働者の標準モデルとして位置付けることで、非正規雇用におけるジェンダー問題を育児や介護、本人の意欲などを理由とするような個人問題に転嫁する、社会の在り方を問題視していく必要がある。今回の調査では、再度の任用の制限について自治体によって運用が異なっていた。この差異は各自治体で、独自の柔軟な取り組みが可能であることを示している。

 「女性活躍推進法」により男女の賃金格差是正に向けた情報公開が本格化する今年、会計年度任用職員が声を上げにくい現状を踏まえた上で、各自治体は自らが非正規雇用が女性に偏るなどのジェンダー問題を生み出していることや、ジェンダー平等に向けたおのおのの在り方が問われていることを認識する必要がある。

 沖縄県では、在沖米軍基地に関わる、沖縄ならではの女性支援などの専門業務をはじめ、沖縄独自の歴史的・地政学的背景に起因する重要な問題を扱う会計年度任用職員が少なくない。会計年度任用職員のそれぞれの仕事や専門性の実態に見合った制度運用が行われることを期待したい。
 (ジェンダー研究)