南西諸島への自衛隊配備が進んでいる。米中対立の矢面に立ち、台湾や尖閣諸島を巡る情勢を背景に政府は「抑止力の強化」を掲げるが、ミサイル部隊を中心とする戦力増強は緊張をエスカレートさせる可能性もある。万が一にも有事となれば、自衛隊や米軍の部隊が展開する島が攻撃目標とされ、住民を巻き込む戦場となることが強く懸念される。
東西冷戦の下、自衛隊は旧ソ連による北方からの侵攻に備えてきた。沖縄返還の1972年には陸上自衛隊那覇駐屯地が開設されたものの、凄惨(せいさん)な沖縄戦の記憶は色濃かった。自衛隊への反感も厳しく、政府は長く南西諸島への本格的な部隊配備には踏み込まなかった。
だが、2000年代以降、中国の軍拡に対し「南西シフト」が取り沙汰されるようになった。10年に那覇駐屯地を拠点とする陸自第1混成団を第15旅団に増強。日本最西端の与那国島に陸自駐屯地が発足したのを皮切りに、奄美大島、宮古島と新設が相次いだ。
今年1月には馬毛島で、米軍艦載機の発着訓練向けの滑走路や、自衛隊の訓練施設や補給拠点となる基地の工事が始まった。
3月には石垣島で陸自駐屯地が開設。今後も、第15旅団の師団へ格上げや、新たな部隊の配備がある見通しだ。
米軍基地が集中する沖縄本島だけでなく、南西諸島全体の軍事化が続く。
(共同通信)