個性の強さ、組織力そぐ つなぐ打撃進化、快進撃<駆け上がれ!センバツ沖尚の挑戦>上


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練習を中断しプレーについて話し合う沖縄尚学の選手ら=八重瀬町

 選抜高校野球大会に県勢最多出場の沖縄尚学が3度目の頂点を目指す。今年のチームは比嘉公也監督が「攻撃は最大の防御」と評する打撃の強さが光る。伝統の堅実野球に加え、勝負どころで発揮する爆発力で九州一まで勝ち上がった。ただ、チームが歩んだ道のりは順風満帆ではなかった。

 昨年8月の県新人中央大会。1年の時から出場機会を得た選手がそろい、優勝の期待がかかっていた。しかし準決勝で好敵手の興南に1―2で惜敗。主戦の東恩納蒼や1番知花慎之助、主砲の仲田侑仁らは昨夏の大会でもメンバー入りし、主力として活躍した。決勝で興南に敗れて甲子園大会出場を逃したため、新人大会で雪辱を果たせなかった悔しさは大きかった。

 興南との因縁は1年生大会にさかのぼる。その時は準々決勝で敗北を喫し、新チームになって臨んだ再戦も競り負けた。敗因はチーム力。先輩たちとのレギュラー争いで競り勝ってきた個性の強さがチームワークの邪魔をした。

 新チームでは先輩たちに頼っていた部分が露呈し、主力は強気な姿勢とは裏腹に仲間を引っ張ることができなかった。「(全員が)自分のプレーに集中し過ぎてちぐはぐだった」(佐野春斗主将)という。それぞれが悔しさを胸に現状を見つめ直した。「一つの目標を定めていけば、まとまってくれる」。佐野は気持ちを切り替え、秋季大会優勝を目指してメンバーに声掛けし、意識の共有に力を入れた。

 「狙った球を捉え切れていなかった」と打撃の課題も洗い出した。ストライクを取りにくる甘い球を見定め「必打」する力を磨いた。スコアラーの植田哲平は「最初のストライク球に強くなった」と、秋の大会を通して選手たちの変化を感じた。犠打の技術も向上し、試合を重ねるごとにつなぐ意識が高まっていったという。

 個の力から一つでも走者を進めるチーム打撃へと進化を遂げた。選手らは強みをいっそう引き上げ、九州大会の快進撃へとつなげた。
 (謝花史哲)


 高校野球の選抜大会が18日に甲子園で開幕し、昨秋の九州大会を制した沖縄尚学が出場する。9年ぶり7度目の挑戦。3度目の優勝を目指すチームを紹介する。