【深掘り】沖縄県、反撃能力の拠点化に警戒 石垣陸自きょう開設 米軍連携、さらなる増強も


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 陸上自衛隊石垣駐屯地(石垣市)が16日、新設される。防衛省は与那国島を皮切りに南西諸島での施設整備を進めてきたが、今回の新設で「南西地域の陸自部隊の空白状況が解消されることになる」(青木健至報道官)と捉える。だが、さらなる防衛体制の増強計画を決定しており、防衛省・自衛隊にとっては「基盤整備」に過ぎない。

 防衛省関係者は、石垣での駐屯地開設で「(南西諸島の防衛体制強化に向けた)ピースがはまった。今後はその能力が発揮できるように中身を充実させていく」と語った。

置き去り

 石垣島や宮古島市に配備される地対艦ミサイルや地対空ミサイルの発射機は車両型だ。有事になれば攻撃の標的になるミサイル発射機が島内を動き回る可能性がある。駐屯地の一部施設は地下化されており、ミサイルなどの攻撃を受けることも想定している。

 防衛省や自民党の関係者は口々に「だからこそ、有事となる前に避難してもらうことが大事だ」と語る。だが、駐屯地開設が完了する今も、避難計画は実効性が不透明だ。懸念を置き去りにしたまま、駐屯地の開設が先行した。

 浜田靖一防衛相は、石垣島に配備される地対艦ミサイルが長射程化された「能力向上型」に切り替えられる可能性も否定していない。そうなれば、敵領域をたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)の拠点の一つとなる。2025年までに米海兵隊の一部部隊が離島有事に対艦ミサイルを扱う「海兵沿岸連隊(MLR)」に改編されることを踏まえれば、先島の部隊との連携が想定されるため、駐屯地を活用した米軍の訓練増加も予想される。

必要性

 県はこれまで自衛隊配備自体は否定せず、住民理解を得るよう政府に求めるにとどめてきたが、今後のさらなる防衛力強化には警戒感を強めている。県関係者の一人は「一度駐屯地ができた後は、さらなる強化をしやすくなるのではないか」と警戒感を示した。

 実際に防衛省は当初、警戒監視を担うとしていた与那国駐屯地に地対空ミサイル部隊を追加で配備する計画を開設から6年たった2022年末に明らかにし、地元では困惑が広がった。

 玉城デニー知事は15日に発表したコメントで、与那国への地対空ミサイル配備計画について県への事前説明がなかったとして「石垣駐屯地においては、このようなことのないよう」と求め、くぎを刺した。

 沖縄が反撃能力の拠点の一つとなりかねないことを巡っても、県関係者の一人は「攻めてきた相手を攻撃するものではなく、沖縄に置く必要性はない。長距離を飛ぶなら配備先は沖縄でなくてもいいはずだ」と強調した。
 (明真南斗、知念征尚)