【深掘り】沖縄県の主張全否定、玉城県政に打撃 戦略の見直し迫られる 辺野古不承認で県敗訴


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名護市辺野古の新基地建設を巡る県と国の訴訟の判決が言い渡された福岡高裁那覇支部=16日午後、那覇市樋川(代表撮影)

 名護市辺野古の新基地建設に向け、軟弱地盤改良工事に伴う防衛省の設計変更申請を県が不承認とした処分の妥当性が初めて争われた2件の訴訟。不承認処分は辺野古新基地建設阻止の「切り札」としてきただけに、玉城県政にとって打撃だ。県は上訴に向け戦略の見直しが迫られる。

 「判決は到底納得できるものではない。上訴に向け判決内容を精査する」

 判決を受けて会見した玉城デニー知事は、上訴する考えを速やかに明言。県の裁量を否定する判断を「地方自治の観点からも許されない」と強く批判した。

感触

谷口 豊裁判長

 注目されたのは国土交通相による是正の指示を適法と認め、県の請求を棄却した判断理由として挙げた5項目だ。

 県は埋め立て工期が当初の5年から、さらに9年余りかかることを不承認理由の一つとした。だが、判決は「普天間飛行場の危険性を早急に除去するという埋め立て事業の政策課題と整合しなくなったとはいえない」として県の主張を退けた。

 この点に玉城知事は「政治的判断の要素が、裁判所の主張中に含まれている」と指摘。「国の代弁をしているという風にしか受け取れない」と問題視した。

 県幹部は判決について「(訴えの中身は)全否定された」と厳しく受け止める。一方で「これまでの判決は門前払いばかりだった。今回は否定されたとはいえ、(議論の)基礎ができた。これを覆す論理がつくれれば、新たな展開ができるかもしれない」と、上訴審に向けた感触も語った。

遠い完成

 是正の指示について、県の不承認処分を「裁量権の逸脱または乱用がある」と立ち入った上で国側の主張を支持した判決に政府関係者は「国側の訴えを認める判決だ。県はきちんと対応してほしい」とけん制した。

 政府の求める「対応」とは、防衛省が県に提出している設計変更申請を認めることだ。県の承認がなければ、軟弱地盤が堆積する大浦湾側の工事を前に進めることができない。今回の訴訟では「不承認」が消えた状態が認められただけで、県が承認したことにはならない。

 政府は判決に一喜一憂せず、淡々と工事や手続きを進める構えだ。防衛省関係者の一人は「過去にも最高裁までもつれ込んだ事例があり、当然それも想定している」と述べた。「今できる辺野古側の工事をしっかりと進めて一日も早い完成に向けて取り組む」と強調した。
(知念征尚、明真南斗)