「戦前に向かっているようでやりきれない」週末の石垣、市街地を抜けミサイル弾薬搬入 陸自駐屯地開設


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市民が抗議する中、駐屯地に向け石垣港を出るミサイルの弾薬を積んだとみられる自衛隊車両。奥は車両を運んできた海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」=18日午前9時32分、石垣市

 【石垣】陸上自衛隊は18日、誘導弾(ミサイル)などの弾薬を海路から陸路を使い、16日に開設したばかりの陸自石垣駐屯地に運び入れた。親子連れや観光客が行き交い、タクシー、トラクターが通行する中、弾薬を積んだ車両が大きなエンジン音をとどろかせ走行した。市民らは港で、沿道で、駐屯地前で「島を壊すな」「ミサイル持ってくるな」と抗議の声を振り絞った。

 弾薬を積んだ海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」は午前7時ごろ、石垣港クルーズ船バースに接岸した。弾薬を載せたとみられるコンテナを積んだ車両18台をバースに降ろした。

 市民らは島に「ミサイル」が入ることを拒否しようと、薄暗い早朝からバース前に集まった。陸自車両の移動を阻止するためバースのゲート前に立ちふさがったが、数度の警告の後に警察官がゲート前から排除した。陸自車両は午前9時半ごろに駐屯地に向けて出発した。

 つえをついて抗議行動に参加し、警察に排除された女性は「(駐屯地という)形はできたが、形あるものは壊れる。それが戦争の形ならば平和を求める心を結集して崩したい」と諦めない意思を示した。元教員の男性は「大戦の教訓を忘れ、逆に戦前に向かっているようでやりきれない」と肩を落としつつ「これからも声を上げていかないといけない」と強調した。

ミサイルの弾薬搬入に抗議し、警察官に移動を促される市民ら=18日午前9時26分、石垣市

 車両は多くの店舗が立ち並び市内で有数のにぎわいを見せる「730記念碑交差点」を西向けに横切り、街中を走って行った。

 駐屯地から最も近い集落の開南で生まれ育った60代の女性は「戦後78年たって、どうしてまたこういう状況になるのか」と小さな声で語り、自宅近くで進む軍備増強に静かな怒りをにじませた。

(大嶺雅俊、照屋大哲)