「金網に囲まれたら何も分からない」農家の男性「命の水源地」汚染を危惧 石垣陸自駐屯地開設


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陸自駐屯地開設により、水質や騒音などの問題を懸念する嶺井善さん=12日、石垣市

 沖縄県石垣市平得大俣に開設された陸上自衛隊の石垣駐屯地に18日、弾薬が搬入され、防衛施設としての運用が本格的に始まることになった。防衛省が配備を市に正式打診してからおよそ7年半。住民らが当初から示してきた生活環境悪化への懸念は消えていない。

 島の中央部にある県内最高峰の於茂登岳の麓に駐屯地は開設された。一帯は島の水源地とされ、豊富な地下水脈が走る。

 周辺住民をはじめとする市民からは、駐屯地からの排水による汚染や、大規模開発による水流の変化などへの懸念が強く示されてきた。防衛省は生活に影響を与えない運用を進めるとするが、不安を抱く市民も多い。

 「金網に囲まれたら何も分からないよ」。駐屯地から1キロほど離れた場所でサトウキビやウコンを育てる農家の嶺井善(まさる)さん(57)はベンチに腰掛け、缶コーヒーを手にそうつぶやいた。

 国などの説明を信じ切れないのは、水源地であるこの地が予定地にされた過程を含めて「ブラックボックスだ」と不信感が根強いからだ。沖縄本島の基地周辺では有機フッ素化合物(PFAS)が問題となり、目に見えない汚染の怖さも強まる。駐屯地でも「何か分からないもの(物質)が使われるのでは」と心配は募るばかり。

 島の先輩らが口にしていた「水はおろそかにしてはいけんよ」との言葉の意味をより強く感じるようになってきた。生活にも農業にも欠かせない水の安全性。「環境を変えた側が(検査を)ちゃんとやらんといけない」とくぎを刺す。

 駐屯地一帯は、サトウキビやパイン、マンゴーなどの畑が広がる静かな農業地帯で、小さな集落が点在する。だが、駐屯地建設に伴う騒音や交通渋滞が発生し、生活環境が変わってきた。嶺井さんは遠くを見詰めて言った。「今からだよ、影響が出るのは」

(照屋大哲、大嶺雅俊)