仕事の重圧によるうつで休職していた男性。完全に治らないまま会社に復職を打診したが、「完全に治してから復職しないと困る」と突っぱねられたことを機に、復職支援(リワーク)を行う沖縄障害者職業センターに連絡した。
休職中もリワークの存在は知っていたが、効果を信じていなかった。ただ、同センターに通い始めると休職中に起きていた自分の変化に気づかされていく。
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同センターでは認知機能の回復のため、小学生用の「百マス計算」などから取り組む。「大人がこんなものやるのか」。と思ったが、スムーズに解けず、どっと疲れた。認知機能の低下を痛感し「何もせず、無理に復帰したらどうなっていただろう」と痛感し、「2回目の休職はしない」との決意で本腰を入れて通い続けた。
同センターではさまざまなプログラムがあるが、男性は、働く価値や職場で自分を生かす役割を考える「キャリア講座」で、仕事や家庭における自分の立場を客観的に見つめ直していった。センターの職員や同じ境遇の人と話し合うことで、自分の感情が整理されていく。休職したことで自分の価値が失われたと思っていたが、新たな価値観に切り替わっていく感覚が「視座が上がっていくようだった」という。
復職は数時間単位から始め、休職中に会社と調整してくれた上司と毎日面談し、気持ちを伝えた。働くスタイルを再確立した今、自分が休職した経験を隠すことはない。ただ、似たように悩んでいる人から相談を受ける機会が増えたという。自分と同じように八方ふさがりの中、会社に迷惑を掛けた分を取り戻そうとしている人もいた。
「会社が全ての従業員に目を配ることはできないだろうが、予備軍は多い。でも、休職に至らない対応を学ぶ場もない。研修があっても自分がなってみないと響かないかもしれない」と感じている。
だからこそ、リワークの存在を知っておいてほしいと思う。「再び休職しないように二人三脚で学べる。数カ月かかるが、遠回りのように見えても正解と思えるはずなので、悩んでいる人全てに受けてほしい。これから困難にぶつかる若い人は、自分で自分を守る心の持ちようも知ってほしい」と語った。
(嘉陽拓也)