年度末は公的機関や民間企業にとって人事異動の季節だ。新天地の人間関係や仕事への重圧、生活スタイルの変更などで、精神的失調を訴え、うつ病などで休職する事例もある。厚労省が2021年に10人以上を雇用する1万4千事業所と働く1万8千人に実施した調査では、約半数の人が強いストレスを抱えており、その内容は多い順に業務量や質、人間関係、役割や地位の変更だった。休職は当事者や企業にとっても重要な課題となっている。沖縄県内の当事者や、復職(リワーク)に向けた関係機関の取り組みを3回にわたり紹介する。
「仕事にやりがいを感じていた自分がまさかうつになるとは」。かつて営業職だった男性(38)は数年前、出向先の部署でうつ病となった。
当時の業務は、大型施設のインフラ関係を請け負う企業の営業職。新事業のメンバーに選ばれて意気揚々と働き始めたが、その重圧が徐々に自らを苦しめた。私生活でもトラブルが重なった頃だった。
日に日に落ち込んでいき、次第に眠れなくなっていく。「これぐらい、自分だけではないはず」。弱音を抑えていた体は重く動かなくなり、会社に相談して仕事を休むことに決めた。
1~2週間休めば何とかなると思っていたが、体調は戻らず、出社する意欲が湧いてこない。「なぜこうなった」。自問するうちに思考の大半は、会社に迷惑を掛けている罪悪感や恥ずかしさで埋め尽くされた。次第に引きこもるようになったが、親兄弟には休職したと伝えていないので相談もできない。「穴があるなら入りたい気持ち。立ち直る答えを探せず、八方ふさがりの状態でした」。
夜も眠れないため昼夜が逆転し、体もだるい。「一生この状態か。住宅ローンの返済もあるのに」と思っても、治す気力も湧いてこなかった。数カ月が過ぎ、会社の休職期間の限界が迫ってきため、会社の保健師に連絡して復職を相談した。
体調は万全ではない。「迷惑を掛けるかもしれませんが、徐々に慣れていければ」。配慮を求めたが、会社の保健師は突っぱねた。「会社はリハビリの場ではない。100%治ってから復職してもらわないと困る」。
男性にとっては予想外の反応だった。「早く会社に戻らないと皆に迷惑を掛けると思っていたのに」。なぜかものすごく腹が立った。でも、確かに会社の言い分の方が正しい。「逆ギレ気味」で、以前に保健師から聞いていた復職を支援する沖縄障害者職業センターに電話した。
(嘉陽拓也)
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