【深掘り】オスプレイ陸揚げ、那覇だけ事前連絡、県は事後…防衛局が対応を分けた狙いは


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那覇軍港に駐機する米軍のMV22オスプレイ=20日午後0時51分(喜瀬守昭撮影)

 米軍が18日に米軍那覇港湾施設(那覇軍港)に陸揚げした垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは20日、那覇軍港を離陸した。沖縄防衛局は地元那覇市に対しては非公表を条件に陸揚げを事前連絡したが、県には事後連絡とし、県と那覇市で情報提供の扱いを分けた。県は軍港からの離着陸に反対する姿勢を示す一方、那覇市側は抗議せず、これまで歩調を合わせてきた県と市のスタンスの違いも浮き彫りとなった。

 知念覚市長は市長就任初日の昨年11月16日、米軍機の離着陸は那覇軍港の現有機能に含まれないとしてきた市の見解を踏襲するか問われ、「白紙でいく」と表明。

 県と歩調を合わせて抗議してきた城間幹子前市長とは一線を画し、防衛局や米軍と「交渉」を重ねている。知念氏は「反対したところで今の運用は続く。それより一歩でもいい方へ前進させる現実路線だ」と強調する。

 那覇市への情報提供について防衛局は本紙取材に対し「知念市長の強い要望を踏まえ、米側として配慮が行われた」との認識を示した。

 今回、市が米軍側に要望していた(1)市への事前通報(2)事前通報の市民への公表(3)安全確保―のうち、市民への公表以外は「確認できた」として「一定の前進はあった」と知念氏は評価する。

 だが、市民への公表は「ハードルが高い」と知念氏自身も受け止めており、どこまで市民の不安が払拭できるかは不透明さが残る。知念氏は「市が事前通報を受けていれば、事前に公表できなくてもオスプレイが現れたタイミングで通報内容をホームページなどで伝えられる。今までよりはいい」と理解を求める。

 一方、玉城デニー知事は「多くの県民や観光客等の安全を脅かすもので、断じて容認できない」とコメントを出し、強く反発した。

 県は那覇軍港が市街地に隣接している上、軍港の使用主目的を「港湾施設および貯油所」と明記した沖縄の日本復帰時の日米合意(5・15メモ)を根拠に、繰り返し飛行中止を求めてきた。昨年11月には玉城知事と当時の城間那覇市長の連名で抗議した経緯がある。

 その城間氏の「後継」であるはずの知念氏による那覇市の方針転換に、県関係者は戸惑いの声を上げる。

 県幹部の一人は那覇市にのみ情報を提供した防衛局の姿勢について「防衛局になびく市町村にのみ情報を提供することで、地元の分断を狙っているのだろう」と強い警戒感を示した。その上で那覇市と意見が異なることで「県も主張しづらくなる」と今後の影響に懸念を示した。
 (知念征尚、伊佐尚記)