「みんなと違っていい」 竹内清文さん、あの頃に言って欲しかった言葉を伝え続け 自殺対策強化月間


この記事を書いた人 Avatar photo 稲福 政俊

 3月は「自殺対策強化月間」。学校で性の多様性に関する講演をしてきたNPO法人レインボーハートokinawaの竹内清文理事長は、子どもたちに「みんなと違っていてもいい」と伝え続けている。その言葉の背景には「命を守りたい」という思いがある。

インタビューに応えるNPO法人レインボーハートokinawa理事長の竹内清文さん=10日、那覇市泉崎の琉球新報社

 「49.7%が自殺をしたいと思ったことがあり、18.9%が自殺未遂を経験」「自殺未遂は異性愛者の5.89倍」「性的少数者の高校生3割が自傷行為」。竹内さんの講演資料には、性的少数者が自殺の「ハイリスク層」であることを示すデータが並ぶ。どれも公的機関や研究者による調査で、性的少数者が置かれた現状を客観的に表している。

 「自殺念慮の発生時期の第1ピークは思春期」とのデータもある。中学に進学し、制服を着用する時期だ。県内の学校は制服選択制が浸透しているが、戸籍上の性別と異なる制服を選ぶには事前の「相談」が必要な場合も。「子どもが誰かに自分の性のことを『相談』するのはハードルが高い。ましてや、初対面の大人になんて」。まだまだ改善の余地はあると指摘する。

 竹内さんは、当事者の友人4人を自殺で亡くした。「明るくて、自ら命を絶つなんて思わなかった人もいる。人格形成の大事な時に不安定な気持ちで過ごすと、大人になっても不安定になるのかな」。子どもの頃に受けた傷は大人になっても癒えないと感じる。

 自身もゲイを打ち明けたのは22歳の時。自分らしさを押し殺して思春期を過ごした。恋愛の話になると「興味がない」と言ってみたり、自ら「ゲイって気持ち悪い」と言ってみたり。「ばれたらまずいと思って、常に不安だった」という。

 学校での講演後、個別に相談を受けることもある。号泣しながら気持ちを打ち明ける生徒を見ると、胸が締め付けられる。多様性を認め合える社会になる必要性を強く感じる。

 「みんなと違っていてもいい」という言葉は、自分が子どもの頃に誰かに言ってほしかった言葉だ。「直接相談できなくても、言葉が『心の種』として残ってくれればいい」。本年度の講演回数は約160回。「心の種」を受け取った子どもたちの数は増え続けている。(稲福政俊)