肉用牛を預かり育成 沖縄・伊江村に複合施設が完成、来月始動 ブランド化、農家の負担軽減へ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
4カ月齢の子牛を預かりセリ出荷までの約5カ月間管理育成する子牛預託施設=23日、伊江村の村畜産総合施設

 【伊江】本島北部の畜産業振興に向けた肉用牛用複合大型施設「伊江村畜産総合施設」が同村内に完成し、23日、落成式が行われた。県内の肉用牛施設では初めて、農家から子牛や妊娠した牛を預かり管理育成する預託機能を備えた。農家の負担軽減を図るとともに、ブランド牛の確立や後継者育成を目指す。4月3日に運用を開始する。

 北部の肉用牛生産は県内産の2割を占め、伊江村と今帰仁村が県の拠点産地に指定されているが、生産者の高齢化や生産コスト増などで経営戸数は年々減っている。

 村肥育センターの老朽化に伴い、高品質の肉用牛を安定供給するための基盤強化を目的に、複合施設を整備した。沖縄北部連携促進特別振興事業を活用し、総事業費は16億7千万円だった。

 2万6807平方メートルの敷地には、妊娠牛預託施設(マザーステーション、336頭収容)、子牛預託施設(キャトルセンター、324頭収容)のほか、肥育施設や新規就農者向けの繁殖研修施設、受精卵生産供給施設などが並び、最大918頭を収容できる。

 指定管理を担うJAおきなわが農家と契約を結び、子牛は1日当たり1070円、母牛は同750円(いずれも税抜き)で預かる。牛を預託し分業化することで、高齢化が進む農家の作業負担を省力化する。管理育成を通じてセリ価格を高めブランド化を進めて、5年後の2027年度末までに施設稼働率9割超を目指す。北部の母牛飼養頭数も7034頭(21年12月現在)から、300頭程度増やしたい考えだ。

 落成式で名城政英伊江村長は「北部の畜産振興につながるようJAと一体となって取り組む」、前田典男JAおきなわ理事長は「施設が発展することは、沖縄の肉用牛振興につながる」とそれぞれ力を込めた。
 (岩切美穂)