コロナ療養支えたホテル、「社会貢献」の誇りを胸に 3月から通常営業を再開 うるま・アンサ沖縄


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宿泊療養施設として利用されていた時に事務局が置かれたレストランで、当時を説明するアンサ沖縄リゾートのエミー・花城支配人=10日午後、うるま市

 新型コロナウイルス感染者の急増による病床不足を補うため、宿泊療養施設として感染者を受け入れてきた県内ホテル業界。新型コロナ感染が収束に向かいつつある中で、その役目を終えるホテルも出始めている。うるま市の「アンサ沖縄リゾート」は今年1月、約1年半続けた療養施設としての県との契約を終え、3月から通常営業を再開した。ホテルのオープンはコロナ禍直前の2019年11月。従業員らは社会貢献の誇りを胸に、新しい門出を迎えている。

 アンサ沖縄リゾートが宿泊療養施設となったのは、21年8月のことだった。その10日ほど前に、県が宿泊業者向けに開いた療養施設に関する説明会に参加していた。直後に施設提供の要請があったという。

 「戸惑いはあったが、当時はホテルの知名度も低く、ホテルを運営していくために受けた面もある」。担当の鈴木知親セールスマネージャー(49)は当時を思い返す。

 当然、社会貢献という意識で要請を受けた。ただコロナ禍直前にオープンしたホテル。営業が軌道に乗る前に感染が爆発し、パートやアルバイト従業員を雇い止めするなどの影響も出ていた。療養施設となることでの県からの委託料で、従業員を雇い続けられるだけの資金を確保できた。

 だが感染症患者の受け入れに、従業員間では不安も広がった。療養者が使った部屋の清掃を担当するスタッフのほとんどが、恐怖から仕事を辞めたこともあった。

 県との契約は当初、21年9月末までだったという。だが契約は延長に次ぐ延長だった。急な延長により、2年前に予約を受けていた修学旅行を受け入れられず、他のホテルに頼み込み受け入れてもらったこともある。眼下に美しい風景が広がるレストランは対応のための事務局となり、医療従事者らが詰めた。宿泊客がくつろぐための空間が殺伐とした。

 エミー・花城支配人(66)は「私たちは普段、お客さまにおもてなしをしている。だが療養者の情報は個人情報ということで、こちらには教えてもらえない。もてなすことができず寂しかった」とその葛藤を語る。それでもうれしいこともあった。療養者としてホテルを利用していた人から感謝の言葉をもらった。療養施設となる前にホテルを利用していた客も戻ってきた。

 ホテルは今月、通常営業を再開した。療養施設だった過去はホームページで公表している。鈴木セールスマネージャーは不安感を吐露しながらも「お客さまがどう思うかはそれぞれだと思うが、われわれの歴史として隠してはならない」と語る。

 花城支配人は「ホテルマンとしては、お客さまに病気があるかないかだけで、その他の違いはなかった」と言い切る。「施設提供できて良かった」(花城支配人)。社会に貢献できたと胸を張った。
 (西銘研志郎)