京都舞鶴「学生語り部」が沖縄で平和学習 琉大生と交流 自衛隊への認識「真逆でびっくり」


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自衛隊に対する見方や自衛隊配備拡大について意見を交わす舞鶴の「学生語り部」と琉球大の学生ら=25日、琉球大

 本土の戦後引き揚げとシベリア抑留の歴史を伝える舞鶴引揚記念館(京都府舞鶴市)の「学生語り部」18人が25日に初めて沖縄を訪れ、沖縄戦を学んだ。南西諸島での自衛隊配備拡大について、琉球大学生との意見交換では、沖縄で戦争への懸念が高まっていることを知り、視野を広げて戦争体験を継承することの大切さを実感していた。

 舞鶴との交流は、沖縄の戦後引き揚げを研究する琉球大の中村春菜准教授を通して22年から始まった。今年2月には同大の学生が舞鶴を訪れた。

 今回舞鶴から訪れたのは中高生や大学生など18人。舞鶴引揚記念館で「学生語り部」としてボランティアガイドを務めている。同館の長嶺睦学芸員によると、活動は2016年に地元の中学生3人が自主的に始め、今では30人に増えた。

 一行はひめゆり平和祈念資料館を見学後、琉球大の学生も交え、琉球新報の南西諸島配備を報じる紙面を見て語り合った。沖縄を戦場にすることに反対する元学徒らの声明について、舞鶴側から驚きの声が上がった。

 舞鶴には戦前、海軍の軍港が、戦後は海上自衛隊が置かれている。安定した就職先として選ぶ同級生も多いという。「自衛隊は日本を守ってくれるから安泰だと思っていた。真逆でびっくり」「沖縄の人の危機感は全く知らなかった」と話し、沖縄側も双方の認識の差に驚いていた。

 中村准教授は「沖縄と舞鶴とでは自衛隊に対する考え方は違う。どちらが正しいではなく、考え続けてほしい」と呼び掛けた。

 終了後、舞鶴学生語り部の宵田琉偉さん(14)は「90代になっても語りきれない、という沖縄戦体験者の切実さを記事で感じた。当事者の思いをしっかり語り継いでいきたい」と話した。吉田透子さん(16)は「沖縄に来て視点が変わった。引き揚げ体験者は年上の男性だがひめゆりは同世代の女の子。『ほんまに(戦争)あかんのやな』って胸が締め付けられた。全国に視野を広げ、沖縄のことも交えて語っていきたい」と思いを新たにしていた。

 琉球大3年の平敷祐子さん(21)は「違う意見や見方に気づくことができた。沖縄の平和教育も、他県の中高生と交流すれば基地問題など今の課題を考えるきっかけになると思う」と話した。

 (中村万里子)