沖縄の経済対策に司令塔設置を コロナ禍を総括、県に提言 沖縄経済同友会 金融界等の交流強化も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
新型コロナウイルス禍の総括と提言書を照屋義実副知事(中央)に手渡す渕辺美紀代表幹事(右から2人目)ら沖縄経済同友会のメンバー=27日、県庁

 沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事(JCC会長)、川上康代表幹事(琉球銀行頭取)らは27日、県庁を訪れ、未曽有の経済危機となった新型コロナウイルス禍の総括と提言書を照屋義実副知事に手渡した。県内外や海外のコロナ対応を振り返って課題や教訓を洗い出した上で、災害時に経済対策を迅速に立案・実行する司令塔機能の確立をはじめ、デジタル社会基盤の整備、平時からの県と経済・金融界の交流強化などを申し入れた。

 提言は、災害など緊急事態における企業の事業継続計画(BCP)が準備されていなかった状況が浮き彫りとなったのと同時に、コロナ禍で「行政版のBCP対策がなされていなかった」ことを露呈したと指摘。医療分野のように経済分野についても、強力なリーダーシップを持つ司令塔機能が必要だと提起した。

 公的機関や民間金融機関による資金供給機能の安定化を図るため、産学官金医の有識者が集う横断チームを設置することのほか、観光業を含めた幅広い県内企業を対象とした「危機管理基金」の創設など、経済危機を食い止めるための危機管理対応を提案した。

 コロナ禍で見えた課題の一つとして「日本は先進国のみならず、新興国と比較してもデジタル後進国と実感した人も多い」とも指摘。「沖縄版Society5・0」と銘打ったデジタル社会基盤の整備を図るため、行政、民間、地域社会から生み出される情報をデジタル化して使いやすくしていくデータの整備と利活用、人材育成の方向性を示した。

 行政で保管するデータを無償で2次利用可能なデータとして公開することや、2~3年でのデータサイエンティスト育成カリキュラムの創設などを提案。全国に比べても沖縄県で遅れているマイナンバーカードの、積極的な普及促進も掲げた。

 次のパンデミック(世界的大流行)に備えたルール作りとともに、感染拡大抑制と経済活動の両立の難しさが顕著となったことから、定期的な県と経済・金融界との情報や意見交換の場が必要だとした。

 沖縄経済同友会の伊東和美地域・経済活性化委員長は「建設的な観点からの提言となった。経済界と県で協力し、次世代が胸を張って沖縄県を作ってもらえるようにしたい」と話した。

 照屋副知事は「いち早く総括や提言を行ってくれたことに感謝している。豊かで力強い経済の実現に向けて取り組む」と語った。
 (與那覇智早)