島田叡氏「命は宝だ」発言、映画「島守の塔」サイトから引用し教科書掲載 識者「発言の根拠ない。修正を」


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沖縄戦当時の県知事・島田叡氏について紹介するコーナーを設けた小学6年の社会科教科書(日本文教出版)

 今回の検定で合格した小学6年の社会科教科書で、日本文教出版は沖縄戦当時に県知事だった島田叡氏を取り上げた。児童の「まなさん」が調べた内容という設定で「最後まで住民に生きるように呼びかけた沖縄県知事・島田叡」と題して紹介した。沖縄戦研究者からは、島田氏が日本軍に全面協力し、軍よりも住民の犠牲が多くなる結果につながった側面を指摘し、修正を求める声が上がる。

 同教科書は、多くの住民が犠牲になる状況を見た島田氏の言葉として「最後は手を上げてガマを出なさい。生きのびて、沖縄の再建のためにがんばるのだ。命は宝だ。生きぬけ」と記した。児童の「まなさん」が「考えたこと」として「戦争のときは、国のために死ぬことが当たり前と思われていた時代に、生きるように呼びかけた島田は、とても勇気のある人だったと思う」とまとめた。

 日本文教出版によると、島田氏の「命は宝だ」との言葉は映画「島守の塔」の公式サイトを根拠にしたという。

 沖縄国際大学非常勤講師で沖縄戦研究者の川満彰さんは、各種文献や証言でも島田氏が「命は宝だ」と発言したという根拠が見当たらないとして「『命どぅ宝』は島田叡が発した言葉ではない。そもそも教科書に記載する内容をホームページから引用することはあってはならない」と批判した。確かな根拠に基づかない記述が教科書に載ったことを問題視し「安易な行為が『新たな戦争への道』を気づかずに歩む。修正を求めたい」と強調した。 (古堅一樹)